外出先で赤ちゃんに授乳する際、胸元や赤ちゃんの体を覆うために使われる「授乳ケープ」。カフェでそれを使って授乳するのはありか、なしか。Xに投稿されたある体験談をきっかけに、論争が巻き起こっている。ケープを使った授乳については、「周囲への配慮として問題ない」とする声がある一方、「人前での授乳には抵抗がある」との意見もあり、受け止め方はさまざまだ。
しかし、こうした議論の背景には、外出先で安心して授乳できる環境が十分に整っていないという現実がある。国土交通省が昨年実施した調査でも、授乳室の不足や利用上の課題が浮き彫りになった。
カフェで授乳ケープを使うのはありかなしか…Xで賛否
「カフェでケープ使って授乳してたら『たくさんの人がいますので…』と注意されてしまって反省」
Xに投稿されたある保護者の体験談をきっかけに、外出先での授乳をめぐる議論が広がっている。「人前でケープ使って授乳は見てる人がどう思うか分からないのでしないほうが良い」「ケープ使っての授乳、全く気になりません」などさまざまな意見が寄せられ、賛否が分かれている。
生後間もない赤ちゃんは2~3時間おきの授乳が必要になることもあり、保護者は昼夜を問わず授乳を行う。成長につれて少しずつ授乳の間隔は空いてくるものの、乳児期には外出先でも授乳が必要になる場面は少なくない。
そのため、保護者が安心して外出できるようになるためには「授乳室の有無」が重要な要素となる。
ある40代の母親は「外出時は授乳室の場所を調べていた」と振り返る。
「子どもが小さかったときは、あらかじめ授乳室がある施設を調べたうえで、その場所にしか行きませんでした。授乳ケープは一応持ってはいたけど、実際に使ったのは1回くらいですね。やはりケープがあっても他人の目は気になりました」
また、2人の子どもを育てる別の母親はこう話す。
「子どもが小さかった頃は、外出時は授乳室を利用したので授乳ケープは持っていませんでした。外出時で特に困ったことはなかったけど、家族の用事で長時間タクシーに乗っていた時に授乳時間となり、運転手さんに授乳してもいいかと聞いたら、『ああいいよ』と快く応じてくれて助かったことがありました」
一方、70代の女性の中には、「昔はそもそも赤ちゃん連れで外出する機会がほとんどなかった」と振り返る人もいる。
「私は専業主婦だったので、赤ちゃんを連れて外出する機会もほとんどありませんでした。それに当時は、母親が赤ちゃんに授乳することは、ごく自然なこととして受け止められていたように思います」
国土交通省の調査では「授乳室がなくて困った」が6割
少子化が進む中、子育てをめぐる環境や考え方は大きく変化している。今では赤ちゃん連れで外出する家庭にとって、外出先の環境整備はますます必要なものになってきている。
こうした状況を踏まえ、国土交通省は令和7(2025)年に「子育て世代の外出先での授乳室・トイレ利用等に関するアンケート調査」を実施した。
子育て世代が安心して外出先での授乳や搾乳、トイレの利用ができる環境の整備を進めるため、バリアフリーに関するガイドラインの改正を検討する中で実施されたものだ。
調査によれば、外出時の授乳・搾乳についての困りごとで最も多いのは、「授乳室がないこと」で60%に上った。アンケートでは切実な声が上がっている。
「田舎に住んでいますが、地方は授乳室の数は本当に少なく、あったとしても衛生管理が心配な場所が多いです」
「公民館や子ども向けの催し物を頻繁に開催してる施設で、授乳室の有無を尋ねたところ、バリアフリートイレを案内されました。授乳=赤ちゃんの食事であるはずなのに、案内した方やその施設の子育てに対する意識が低いことにがっかりしました」
また、授乳室があればすべて解決するというわけでもない。
「ベビーカーを置くスペースがない」「授乳室に男性が入れない」「年配の方が、授乳室を休憩室として使っているところを何度か目撃したことがある」など、授乳室をめぐる課題は山積している。
同省の担当者は、調査を実施した背景に「国が子育て支援を進める中で、特に保護者の外出先での環境整備が必要だという声があった」と説明し、こう続けた。
「子育ての環境整備は複数の省庁で取り組んでいますが、授乳室なども含めたハード面の整備は国交省の管轄になります。
(環境整備には)自治体や民間事業者などの皆様の取り組みが不可欠ではありますが、今後何かガイドラインを作ることになれば、国交省で対応することになるかと思います」
国交省は調査結果を踏まえ、2025年に建築物と公共交通機関のバリアフリー関連ガイドラインを改正・改訂した。ベビー休憩室や授乳・搾乳室の設備、トイレ、施設情報の提供に関する記載を充実させているが、今後の方策についてさらに検討を重ねると話した。
授乳室など外出先の環境整備は、子育て世代が安心して出かけるために欠かせない。一方で、外出先で授乳が必要になる場面があることを、社会がどう受け止めていくかも、子育てしやすい社会づくりの重要な課題の一つとなっている。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

