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初代ファミスタのメガヒットは“伝説のバックスクリーン3連発”のおかげ?「阪神が弱いとゲームが売れない」開発者が語る40年前の虎フィーバー

初代ファミスタのメガヒットは“伝説のバックスクリーン3連発”のおかげ?「阪神が弱いとゲームが売れない」開発者が語る40年前の虎フィーバー

レイルウェイズを最強にした理由

架空のリーグということで、プレイヤーはゲーム内の「JAPAN LEAGUE(ジャパンリーグ)」に属する球団をプレイする。

構成するのはセリーグ球団をモデルにした「Gチーム(ガイアンツ)」「Cチーム(カーズ)」「Dチーム(ドラサンズ)」「Tチーム(タイタンズ)」「Wチーム(ホイールズ)」「Sチーム(スパローズ)」の6球団と、「Lチーム(ライオネルズ)」、近鉄・南海・阪急の混合チームである「Rチーム(レイルウェイズ)」、日本ハムとロッテの混合チームの「Fチーム(フーズフーズ)」、さらにゲームオリジナルの「Nチーム(ナムコスターズ)」の10球団だ。

ソフトの容量不足によるデータ節約のために、80年代に不人気だったパリーグが連合チームにされたと語られることが多いが、岸本さんはこれをきっぱり否定する。

「選手のデータの容量なんて大したことないですよ。パリーグモデルのチームを3球団にしたのは連合チームにすれば強くなって、プレイヤーが使いたくなるから。そうすれば少しはパリーグ人気が上がるんじゃないかと思ったんです」

 10球団中、最強に設定されているのはレイルウェイズ。このチームをつかうことでパリーグに親しみを持ってもらい、人気を向上させたいと思ったのは、取材のために通った川崎球場があまりにもガラガラだったためだとか。

「川崎球場を本拠地にしていた当時のロッテには、三度の三冠王を獲得することになる落合博満がいたのに、まったくお客さんが入ってなかった。テレビだってセリーグばかりで野球ファンもパリーグのことなんて誰も気にかけていなかった。

それが今じゃパリーグも大盛況。このパリーグ人気に少しはファミスタも貢献したんじゃないかな。いや、野球殿堂に私も入れろと言ってるわけじゃないですよ(笑)」

ちなみに、西武も鉄道会社なのでレイルウェイズに組み込まれるはずだった。しかし、それを阻止したのが86年に西武に入団したゴールデンルーキー・清原和博の存在だ。

「すごい人気でしたからね。で、開発当初、ゲーム内の『きよはら』は7番打者とかに設定していたのにリアルのプロ野球で活躍してどんどん打順を上げていく。だからゲーム開発でも打順が連動して、最後にデータをフィックスしたときは4番になっていました」

もうひとつ、ファミスタというシリーズに大きな影響を与えたのが阪神ファンだ。

阪神が弱いと関西でファミスタが売れない

「ファミスタが大ヒットしたのは前年の85年に阪神が“バックスクリーン3連発”など球史に残る強さで日本一になっていたのも大きいと思います。あれで日本全体のプロ野球熱が高まっていましたから」

初代ファミスタの最強打者は「ばあす」。「まゆみ」「かけふ」「おかだ」の能力も高く、タイタンズは強力打線のチームに設定してあった。

しかし、87、88年にリーグ最下位に沈むなど、暗黒期に突入。すでにファミスタは毎年最新版が発売されるようになっていたため、選手のパラメータもそれにアップデートしなくてはいけなくなる。すると、ある問題が生じてきてしまう。

「販売担当から『タイタンズが弱いと関西でファミスタが売れないから強くしてくれ』とお願いされました。

『そういうのはやってないから』と拒否しましたが、その代わりに3年目(『プロ野球ファミリースタジアム'88』)から“先攻びいき”“後攻びいき”という全選手のパラメータがアップするモードを実装することにしたんです。

阪神を強くしたかったらこのモードをうまく使ってね、と。これで関西圏の売上が回復したかはわかりませんが(笑)」

ともあれ、ゲーム史を彩ったファミスタシリーズは、94年から『実況パワフルプロ野球』(パワプロ)シリーズが登場したことで、徐々に存在感を失っていく。それでも岸本さんは「パワプロはすごいゲームだけど、アクションゲームとしてはファミスタのほうがおもしろかったんじゃないかな」と今も胸を張る。

現在、阪神は黄金時代ともいえる強さ。このデータをもとにタイタンズがつくられれば、きっと関西の子どもたちが夢中になる強いチームになるに違いない。

取材・文/武松佑季

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