妻が引き出しに近づいた気配
食器を片付けた妻が寝室へ向かう足音を聞いた時、俺は机の引き出しに、消し跡だらけのノートを入れっぱなしにしていたことに気づきました。取りに行こうか迷っているうちに、寝室から出てきた妻は、いつもと同じ声で「先に寝るね」とだけ言いました。
ノートを見られたのか、見ていないのか、聞く勇気はありませんでした。俺はソファに座ったまま、机の中の走り書きのページを頭の中で開いていました。
そして...
翌日、コーヒーを差し出した妻が「昨日、記念日だったね」と切り出しました。俺は「予約が取れなくて、言い出せなかった」とだけ返しました。完璧な店と、完璧な一言を用意することにこだわりすぎたんだと、今なら思います。
今年から、俺たちは記念日には店を決めずにとりあえず出かける約束をしました。書き終わらなかったあの一言は、次こそきちんと妻に渡したいです。
(30代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
