
「感情知能(EI)」とは、自分や他人の感情を理解し、適切にコントロールして行動や人間関係に活かす力です。
感情知能の高い人と聞くと、いつでも冷静で、決して怒らず、誰に対しても優しく接する人物を想像するかもしれません。
しかし、感情知能が高いからといって、感情に振り回されることがまったくないわけではありません。
彼らも腹を立てますし、疲れているときには人の話を十分に聞けなかったり、思わず自分勝手な態度を取ってしまったりすることもあります。
重要なのは、失敗しないことではありません。
感情が動いたときや、自分の間違いに気づいたときに、その状況とどのように向き合うかです。
では、感情知能が高い人に共通してみられる3つの行動傾向とは、何でしょうか?
目次
- その1:感情のまま反応せず、考えて応答する
- その2:嫌な相手には、攻撃ではなく「境界線を引く」
- その3:発覚する前に、自分の間違いを認めて謝る
その1:感情のまま反応せず、考えて応答する
誰かから問題を指摘されたとき、私たちは反射的に自分を守ろうとします。
「自分は悪くない」「相手の方こそ問題がある」と言い返したくなることもあるでしょう。
自分を否定されたように感じれば、相手の言葉を最後まで聞く前に、怒りや不満をぶつけてしまうかもしれません。
しかし、感情知能の高い人は、すぐに反撃するのを抑え、相手が何を伝えようとしているのかを考えます。
相手の指摘をすべて正しいと受け入れるわけではありません。
まずは相手の視点から状況を眺め、そのうえで、自分にも改善すべき点があるかを振り返ります。
つまり、相手に言われたことを無条件に受け入れるのでも、反射的に拒絶するのでもなく、その指摘にどの程度の妥当性があるかを冷静に判断するのです。
その結果、自分に非があると分かれば、責任を受け入れることができます。
反対に、相手の指摘が不公平だと判断した場合には、落ち着いて自分の考えを伝えます。
このときも、相手を侮辱したり、人間関係を壊したりするような言い方は避けます。
感情に任せて「反応する」のではなく、状況を理解したうえで「応答する」のです。
一方、感情知能が十分に働いていない場合、指摘された瞬間に責任を相手へ押し返してしまうことがあります。
問題の中で自分が果たした役割を考えず、強い言葉や怒りによって、問題を持ち出した相手を黙らせようとします。
さらに、その後になって「自分はいじめられた」「相手が攻撃してきた」と被害者の立場を取ることもあります。
あるいは、問題を指摘した相手を無視したり、遠回しに困らせたりするかもしれません。
これでは、本来話し合うべきだった問題は解決されません。
むしろ、問題を口にした側が「もう何も言えない」と感じるようになり、人間関係に深い溝が生まれてしまいます。
感情知能の高い人が持つ最初の能力とは、怒らないことではありません。
怒りや不安が湧いたときにも、すぐにそれを相手へぶつけず、一度立ち止まって考えられることなのです。
その2:嫌な相手には、攻撃ではなく「境界線を引く」
親切にした相手から、その優しさを当然のように扱われれば、誰でも腹が立ちます。
何度も頼み事を押しつけられたり、お金や時間を一方的に負担させられたりすれば、「利用された」と感じるのも無理はありません。
こうしたとき、表面上は親切に振る舞いながらも、陰で仕返しをしようとする人もいます。
相手の成功をひそかに妨害したり、共通の知人に悪口を言ったり、わざと困るような行動を取ったりするのです。
これは受動攻撃的な対応です。
直接「困っている」「それはできない」と伝える代わりに、遠回しな方法で怒りを表現します。
その根底には、「相手が自分を傷つけたのだから、自分も相手を傷つけてよい」という考えがあります。
しかし、感情知能の高い人は、不快な経験を単なる復讐の材料にはしません。
その出来事を、相手との今後の付き合い方を判断するための情報として捉えます。
何度もこちらを利用し、自分の行動が相手にどのような負担を与えているかを気にしない人であれば、正面から気持ちを伝えても、話し合いが成立しない可能性があります。
相手が逆上したり、責任を押し返したりするタイプであれば、気持ちを説明するほど傷つくこともあるでしょう。
そこで必要になるのが、境界線を引くことです。
境界線とは、相手を罰するための壁ではありません。
自分がどこまでなら引き受けられるのか、何をされたら距離を置くのかを決め、自分を守るための線です。
その方法は、必ずしも冷たく相手を突き放すことではありません。
いつも頼み事を押しつけてくる人から再び助けを求められたとき、「今回は忙しいので難しい」と断ることも境界線です。
食事のたびに財布やカードを忘れ、ほかの人に支払わせる友人がいるなら、次は食事ではなく、費用のかからない散歩などを提案することもできます。
このように、感情知能の高い人は、相手をひそかに傷つける方法ではなく、自分が再び利用されない方法を考えます。
相手に対する怒りを否定するのではなく、その怒りを「この関係では調整が必要だ」という情報として使うのです。
感情知能が高いとは、誰に対しても無制限に優しくすることではありません。
必要なときには断り、自分を守りながら、可能な範囲で関係を続けられる能力でもあるのです。

