前作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)で描かれた出来事から4年後を舞台にした本作。愛する人たちを守るため、彼らの記憶から自らの存在を消して孤独に生活していたピーター・パーカー。スパイダーマンとしてニューヨークの人々を守り犯罪と戦う日々に全力を尽くす一方、そのプレッシャーが命に関わる驚くべき身体的変異を引き起こしていく。さらに街では不可解な犯罪が頻発し、“親愛なる隣人”に大きな脅威が迫ることに。
■「孤独に生きることの危うさを描いた“警告の物語”」
公開まで2週間を切っても、未だ多くのことがベールに包まれたままの本作。すでに完成している作品を観た感想を訊かれたホランドは「デスティンが見事にやってのけてくれました。僕たちは皆、デスティンを“船長”として迎えることができて本当に幸運です」と、これまでのMCU版「スパイダーマン」を率いてきたジョン・ワッツ監督からバトンを引き継いだクレットン監督の手腕を絶賛。

「デスティンは“ひとりぼっちの若者の人生はどんなものか”というテーマに集中し、それを映画全体の核として描いてくれました。これは世界中の人々が向き合う問題でもある。しかもそのテーマを描くためにアクションを犠牲にすることも、映画のスケールを小さくすることもしない。デスティンでなければ、この映画は半分の力も出せていなかったと思います」。
一方でパスカルは「前作の終わりで、私たちは自分たちをとても難しい状況に置くことになりました。そこで決めたのは、誰かの個人的な人生についての物語、つまりピーター自身から生まれる映画にすることでした。それはデスティンがいたからこそ作ることができたものです」と語り、ファイギも「『シャン・チー/テン・リングスの伝説』で彼は本当にすばらしい仕事をしてくれました。そういう人材に出会ったら、手放したくないと思うものです」と、クレットン監督に「スパイダーマン」を任せた理由を明らかにした。

続けてホランドは、「今作の序盤では、ピーターの人生においてもっとも暗い章の幕開けに直面することになります。コミュニティを持たず、友人もおらず、孤独に生きることの危うさを描いた“警告の物語”になっているところがお気に入りです」と、ネタバレにならない程度に今作の深部に触れていく。
「前作でアンドリュー(・ガーフィールド)のスパイダーマンから学んだ教訓の一つは、『時には助けを求めることこそが一番勇気のいる行動』だということ。でもピーターはそのアドバイスを意図的に無視していて、それが彼の人間としての人生に深刻な影響を与えている。一方でスパイダーマンとしての彼は絶好調で、そのふたつの世界がぶつかり合うことは演じる上でも本当に楽しいものでした」。

そして「今作では若い人たちが毎日直面している現実そのものを描いています。だからこそ、僕はこの新しいテーマに深く入り込むことができました。とても身近で、いまの世界で起きていることと強く結びついていると感じたから。このスケールの映画でありながら、若い人たちの心に確実に響く物語を語れることが本当にうれしいです」と、作品の持つドラマ性の高さにも自信をのぞかせた。
■セイディー・シンク演じる“極秘”キャラの真相は?

周囲の人々からピーターの記憶が消えることで、本シリーズを彩ってきたピーターとMJ、ネッドの関係も大きく変わることになる。ネッド役のバタロンは「ピーターにとって不運なことに、ネッドとMJは本当に充実した人生を送っています」と茶目っ気たっぷりにコメントし、「でも同時に2人とも、“なにかが欠けている気がする”といううっすらとした感覚にとらわれています」と、“スパイディ・トラッカー”が彼らの失われた繋がりを見つける手がかりになることを告白。
またゼンデイヤも「これまでの作品でMJはいつも悲観的で、ピーターは楽観的。でも今回はその関係性が逆転している点がとても興味深いんです。ピーターは1人になったことでどんどんネガティブさを抱え込むようになり、MJはいつの間にかピーターの前向きさだけを受け継いでいる」と説明。そして「ピーターは誰もが愛してしまうキャラクターで、正しい選択をしてほしいと心から思わせる存在。前作で他のスパイダーマンが警告した現実に真正面からぶつかりますが、あまり雲行きは良くなさそうで…」と含みを持たせるように語った。

ドラマシリーズ「デアデビル」「パニッシャー」に登場したフランク・キャッスル/パニッシャー役のジョン・バーンサルは、今回満を持してMCUの劇場公開作品に初参戦。ホランドとはかつて『レジェンダリー』(17)で共演するなど旧知の仲で、「トムは僕にとって最高の仲間。今回また同じセットに戻ってくることができました。アイルランドの小さな部屋で一緒にオーディションテープを必死に作っていたあのころが嘘のようです」としみじみ。
司会者から「“大人向け”のキャラクターであるパニッシャーが、どうやってこの世界に馴染むのか?」と質問されるとバーンサルは、「その疑問は僕自身にもありましたが、このチーム全員が見事にかたちにしました。僕たちが目指したのは、TV-MA(17歳未満の視聴には不適切)のドラマの世界からそのまま歩き出し、この作品の世界から戻っていける、そんな説得力を持たせること。その感覚を観客にもちゃんと届けられると思います」と宣言した。

さらに“役名不詳”で謎に包まれたキャラクターを演じるシンクは「脚本はもらっていなかったですが、デスティンと何度も話をしたので物語がどんな方向に進むのかは大体わかっていました。かなり大きな秘密を抱えなきゃいけなかったですが、私はスパイダーマンの大ファンで、この作品に参加できるだけで本当に夢見たいな気分でした」とだけ答え、役柄についての言及を避ける。
するとパスカルは「きっと驚くと思います。彼女のキャラクターについて言えることは、彼女やフランク、MJやネッドやブルース・バナーにいたるまで、全員に共通するテーマが与えられていることです」と説明。ファイギも「彼女自身は何も言えないので、言わせてください」と前置きをし、「新しい人を迎える時、どんなキャラクターでどんな目的があるかを議論し、誰がその役にふさわしいかを考えていきます。セイディーの演じたキャラクターがそのキャラクターになったのは、セイディーのおかげなんです」と明かした。

最後にホランドは、「僕がこの映画への情熱や愛情を抱く気持ちは、スーツを着る機会に恵まれるたびにどんどん大きくなっています」と、スパイダーマンとして歩んできた10年間を感慨深げに振り返る。「僕たち3人は、まだ若かったころ、同じ日に人生が一変し、その経験を一緒に乗り越えてきた仲間。そのことにこれ以上なく感謝していますし、こうして新しいキャストの皆さんと画面を共有できることも本当に幸運なことと思っています」。
そして「ファンの皆さんもこのプロセスの仲間です。僕たちはファンのために映画を作り、その声に耳を傾けています。世界中に若い映画ファンのすばらしいムーブメントがあり、彼らはすばらしいアイデアを持っていて情熱にあふれている。僕たちもその情熱を共有しています。だから、その情熱を代表してステージに立つ幸運な子どもでいられることは、僕にとって決して当たり前ではない、大切な贈り物なんです」とスパイダーマンへの熱い想いを語っていた。
取材/MOVIE WALKER PRESS編集部 文/久保田 和馬
