指輪を選んだとき
あの指輪を選んだのは、付き合って半年が過ぎた頃でした。彼女と過ごす時間が、俺の中で当たり前になりはじめていました。隣で笑う彼女に、この先もそばにいてほしいと思ったのです。すぐにでも渡したいと思っていました。けれど、ふさわしい言葉も場面も見つけられないまま、季節だけが移っていきました。
遠ざかった理由
渡せないまま、俺のほうが先に怖くなっていきました。仕事は思うように進まず、彼女を本当に幸せにできるのかと、自分を疑うことが多くなりました。このまま縛りつけるより、身を引いたほうが彼女のためになる。そう思い込んだ俺は、別れ話の場で「結婚なんて、今は考えられない」と口にしました。本心とは正反対の言葉でした。彼女が傷ついた顔を見せても、訂正できないまま、俺はその場をあとにしました。
