皆には迷わず返すのに
グループで集まると、彼はいつも恋愛の話題の中心にいました。誰に何を聞かれても、明るくかわして場をなごませる人です。皆が笑う輪の少し外側から、私は彼の横顔をよく見ていました。いつか自分も、同じ気軽さで彼と話せる日が来たら。そんな期待を、こっそり抱いていたのです。
2人になったときだけ
集まりの帰り、たまたま彼と2人で駅まで歩くことになりました。さっき聞こえた「彼女いないよ」の声を思い出しながら、私はそれとなく踏み込んでみたのです。「じゃあ、気になってる人とかは?」。彼は少し間を置いて、「今はいいかな、その話」とだけ返しました。皆の前では恋愛の話を軽くかわしていた人が、私の質問には言葉を選ぶように口をつぐみました。歩幅がずれて、私はいつのまにか一歩後ろを歩いていました。
