500件超の商談が問う現在地――関係性を届ける商品開発

実際に全国を回り、500件を超える商談を重ねるなかで、地域の事業者からは「売り方がわからない」「良さをどう伝えればよいか」といった切実な声が聞かれたと同氏は話す。対話を通じて関係性を築くことで、「この土地ならではの組み合わせにしたい」「体験を通じて価値を上げたい」といった具体的な企画へと発展していくとされる。
具体的な事例として、熊本県天草市では、テロワール(土地の個性)を感じさせる焼酎セットを企画。原材料である芋の苗植えから仕込みまで参加し、酒蔵や地元の窯元と試作を重ねて専用の器を開発したという。また鳥取県では、酒米を生産する農家と酒蔵をつなぎ、商品企画や販売方法を検討するプロジェクトにも携わっているという。
こうした取り組みは、商品を単体で販売するのではなく、地域の関係性ごと届ける試みと位置づけられる。ただし、特定の土地に深く根ざした文脈が、都市部の多様な消費者層へどこまで広くスケールしていくかについては、市場側の不確実性もつきまとう。
EC単独に留まらない循環へ。地域商材流通の行方

今後の展開として、同社はEC単独の販路構築を目指すのではなく、多様なチャネルを連携させた循環の仕組みづくりを進めているという。具体的には、リアルな場での紹介やイベントを通じて体験と推薦を生み出し、イベントの様子や参加者の反応をSNSで発信し、ECでの購入や継続的な交流につなげる構想だ。
池田氏は、リアルの場を単なる物販ではなく「コンテンツ創出の場」と位置づけ、B2B取引や独自イベントを含めた重層的な流通を目指していると語る。また、生活者に向けては、地域の商品を単なる「応援」や「同情」で消費するのではなく、背景を理解し、納得したうえで人に勧められるような買い物にしてほしいと呼びかける。
消費者による商品選択の基準は多様化している。一過性の応援消費を脱却し、背景の理解を伴う購買行動が定着していくか。今後の消費行動の変容次第で、こうした体験型流通の輪郭がさらに見えてくることになりそうだ。
【取材協力】
株式会社スコープ
アクティベーション開発事業部
目利き市場DPT 目利き人
池田 健一
https://www.scope-inc.co.jp/

