
人間の体には、日光を使ってビタミンDを作り出す仕組みが備わっています。
そのため、日照時間の短い冬に不足しても、夏になれば再び高まると考えられています。
ところが、英ニューカッスル大学(NCL)の研究チームは、ある人々では、夏にもビタミンD不足が広く見られると報告しました。
研究成果は2026年5月19日付で学術誌『European Journal of Clinical Nutrition』に掲載されました。
目次
- 夏の「ビタミンD」不足解消は、誰にでも当てはまるわけではない
- 夏でも高齢者の半数超が基準値に届かなかった
夏の「ビタミンD」不足解消は、誰にでも当てはまるわけではない
ビタミンDは、カルシウムやリンなどの吸収を助け、骨や筋肉を正常に保つために重要な栄養素です。
魚などの食品から摂取できるほか、皮膚が太陽光に含まれる紫外線B波を受けることでも作られます。
そのため一般には、日照時間の短い冬に減り、日差しの強い夏に再び増えると考えられています。
しかし、皮膚でビタミンDを作る効率は誰でも同じではなく、年齢や肌の色などが関係している可能性があります。
そこで研究チームは、英国北部に暮らす65歳以上の高齢者と、少数派民族的背景を持ち、フィッツパトリック分類IV~VIに該当する18歳以上の成人を調査しました。
フィッツパトリック分類とは、紫外線を浴びたときの肌の反応などをもとに皮膚を6段階に分ける指標で、IV~VIは比較的色素の濃い皮膚に当たります。
データは、ビタミンD補充試験に参加する候補者を選ぶため、2024年12月から2025年8月までに行われたスクリーニングから得られました。
すでにビタミンDサプリメントを摂取していた人などは除外され、最終的に299人が解析対象となりました。
そして参加者は指先から少量の血液を採り、研究チームは体内のビタミンD状態を示す「25-ヒドロキシビタミンD」を精密に測定。
主要な分析では、血中濃度が50nmol/L未満の人を「不足または欠乏」としてまとめて集計しました。
その結果、65歳以上では54.8%、肌の色が濃い少数派民族的背景を持つ成人では72.1%が50nmol/L未満でした。
さらに、月別に見ても夏に向けた明確な改善は確認されませんでした。
では、夏のデータは具体的にどのような状態だったのでしょうか。より詳細な結果を次項で見ていきます。
夏でも高齢者の半数超が基準値に届かなかった
高齢者では、6月から8月に検査を受けた人の平均55.6%が50nmol/L未満でした。
つまり、日照時間が長く、日差しが強くなる季節にも、半数以上が研究で定めた十分な水準に届いていなかったのです。
肌の色が濃い少数派民族的背景を持つ成人では傾向がさらに強く、調査したすべての月で少なくとも64%が50nmol/L未満でした。
研究チームは背景として、加齢による皮膚の合成能力の低下、皮膚のメラニン量、食事、生活環境、文化的慣習などが関係している可能性を挙げています。
英国北部のような高緯度地域では、季節によってビタミンDの生成に必要な紫外線B波が少なくなりやすいことも、リスクを高める要因になり得ます。
この結果から分かるのは、「夏になれば自然にビタミンD不足は解消される」という考えが、すべての人に当てはまるものではない、ということです。
日常生活に当てはめると、単に「外に出ていれば大丈夫」と考えるのではなく、食事からの摂取や必要に応じたサプリメントの利用など、複数の手段でビタミンDを補う意識が重要になります。
また、屋内で過ごす時間が長い人や、日焼け対策を徹底している人も、自身の状態を見直すきっかけになるでしょう。
とはいえ、この研究にはいくつかの限界と考慮すべき点があります。
その大きな部分は、研究費はサプリメント企業のBetterYou Ltd.が全額提供したということかもしれません。
著者らは同社が研究の設計、実施、結果の解釈には関与していないと説明しています。
こうした限界はあるものの、今回の研究は、ビタミンD不足は冬だけの問題ではなく、高リスク層では夏にも注意が必要であることを気づかせてくれました。
参考文献
Summer Sun Was Supposed to Restore Vitamin D but It Barely Helped the People Most at Risk
https://www.zmescience.com/science/news-science/vitamin-d-deficiency-at-risk-groups/
元論文
Circannual prevalence of vitamin D insufficiency in older and minoritized ethnic adults in Northern Britain: screening outcomes from a clinical trial (ISRCTN13778806)
https://doi.org/10.1038/s41430-026-01760-z
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

