最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
和製ライコネン? いや唯一無二? その速さとキャラに国内レース界が注目。トヨタ育成・小林利徠斗の“脳内”を探る

和製ライコネン? いや唯一無二? その速さとキャラに国内レース界が注目。トヨタ育成・小林利徠斗の“脳内”を探る

日本のレース界が、ひとりのドライバーに魅了され始めている。そのドライバーとは、今季スーパーGT・GT300クラス、スーパーフォーミュラ・ライツ(SFライツ)などに参戦する20歳のトヨタ育成ドライバー、小林利徠斗だ。

 山形県出身の小林は、2022年に4輪レースデビューを果たすと、2023年にはFIA F4でチャンピオンを獲得。2024年にはSFライツ参戦初年度ながらランキング2位を獲得した。そして今季はSFライツに参戦する傍らスーパーフォーミュラにも代役参戦してインパクトを残し、スーパーGTでは第5戦鈴鹿で初優勝、第6戦SUGOで初ポールポジションを記録して話題をさらった。

 ここまでの経歴を聞くと、単なる将来有望な若手ドライバーのひとりに思うかもしれない。しかし彼が唯一無二なのはそのキャラクター。物静かで掴みどころのない様は、切れ味鋭い速さと絶妙なコントラストを描いている。

 4月のスーパーフォーミュラ第3戦もてぎでは、代役として同シリーズでのデビューを果たすと、スタートでストールして最後尾に落ちたところからオーバーテイクを連発。関係者もファンも感嘆の声をあげたが、本人はレース後のメディア取材で「(最後尾転落は)自分で引き起こしたことなので……。恥ずかしいですよね。ただのマッチポンプ(自作自演)なので」と語り、歴戦のメディアも目を丸くした。

 彼にとってハイライトとなったのが、初優勝を遂げたスーパーGT第5戦。自身のスティントでは無線トラブルでチームとコミュニケーションを取れていなかった小林は、チェッカー後のパルクフェルメで優勝した事実を聞かされ、「優勝ですか? そんなことありますか?」と驚きつつも冷静なトーンで返答。SNSでは「冷静すぎる」「良いキャラ」「大物になる予感」といった声が寄せられた。

 また先日、密山祥吾氏がスティント直前に仮眠をとる小林の姿を激写。「交代直前でも寝れる。。。そして一瞬でスイッチが入って別人になる。走りは超ファイターだけど、無線はコタツに入ってるくらい、ほのぼの。レース人生30年。こんな選手、見た事ない。バケモノっす」と綴っていた。

 その冷静さ、そして走行直前に寝るというエピソードから、小林をF1ワールドチャンピオンのキミ・ライコネンになぞらえる声もちらほら。(※ライコネンはF1デビュー戦のスタート直前まで寝ていたという逸話がある)ただ、無線でエキサイトすることも多いライコネンとは、またキャラが違うような……。そこで今回は、限られた時間の中で得られた小林の言葉から、彼の人となりや価値観を探っていく。

車の運転が上手くなりたい

 優勝やポールポジションを獲得してもテンションが変わらない小林は、これまでのレースでも、良い結果を残して極端に浮かれることはなかったと話す。その先のレース、その先のステップのことを常に考えてしまうからだという。それは小林のあくなき向上心のあらわれなのか、それともネガティブで心配性な性格が出ているのか……。

「どちらもですね」と小林。

「人間は誰しも心配になることがありますよね。ポジティブなニュースとネガティブなニュースがあれば、後者のことを考えてしまったり。僕は特にその傾向があるのかなと思います」

「あと、僕はレースが好きなのですが、それ以前に車好きで、車の運転が好きなんです。『車の運転が上手くなりたい』というところから(レースキャリアが)始まっているので、レースで勝ったら全てよし、とは全く思っていません」

 小林のベースにあるのは、「運転が上手くなりたい」という思い。ドライバーによっては、F1など特定のカテゴリーを目標に掲げ、そこで優勝やチャンピオンを勝ちとることを最終目標に設定しているケースも多いだろう。しかし小林にとってそういったものは、あくまで「より良いレーシングドライバー」になるための過程だというわけだ。

「全てのレースに結果はついてきますけど、それは自分が良いドライバーになるための過程だと思っています」

「皆さんよく『F1に乗りたい』と言いますし、僕ももちろん乗りたいと思っています。ただ、まかり間違って今F1に乗れることになっても、勉強しきれないですよね。自分の身の丈に合っていないことをしても、もったいないというか……実際に良いクルマに乗る腕があった上で、機会をいただけたら乗りたいなと思っています」

「僕は今の環境に不満はありません。今ある環境でできるだけ吸収して、良いドライバーになりたい。それだけですね」

 小林は「良いドライバーになりたい」という向上心を持つ一方で、徹底したリアリストであり、『エゴ』や『プライド』といったレーシングドライバー然としたワードからは縁遠いように見える。そして称号や肩書きといったものにもあまり興味がない。そういった意味でも、彼は他の才能あるレーシングドライバーとは一線を画した存在と言える。

悩めるSFライツ2年目

 そんな彼は、国内最高峰カテゴリーへのステップアップに向けてあと一歩のところにいる。ただ、前年にランキング2位となったSFライツでは今季のチャンピオン最右翼と目されながらも、なかなか勝てず苦労した。最終大会を残してチャンピオンはホンダ育成の野村勇斗に決まっており、小林は現在ランキング3番手だ。

 レース距離が短くピットストップもないSFライツでは、予選でポールポジションを獲得し、スタートを決めてトップに立ったドライバーが圧倒的に有利。車両のダウンフォースレベルも高いため、前を走る車両の後ろにつくと乱流によりダウンフォースが抜けて追い抜きが難しいからだ。実際、このカテゴリーにおけるポールトゥウイン率は極めて高い。

 言い換えると、SFライツでは予選に向けて“速いマシン”を作り上げることが何よりも重要になる。昨年と比べると自身のスキルという点では成長しているはずだと語る小林は、クルマ作りという点では成長の余地があると述べた。

「今年はそもそものペースがなく、どうしようもないようなレースが続きました。ダウンフォースが少ないクルマであれば、仮にペースがなくとも別の技術で補うこともできるのですが、(SFライツは)むしろその逆という印象です」

「走っている感触としては、少なくとも昨年よりは成長しているので、そんなに悪くないと思います。とはいえセッティングだったり、上手にクルマを作るという点では全然足りていない部分があるので、そこは勉強するしかありません」

「ライツもステップアップカテゴリーですから、何年もやることはないと思います。あとは僕の走りを見て(上のカテゴリーに)上げてもらえるのか落とされるのか……そこは僕が考えてもどうしようもないので、やれることをやっていきたいです」

 まだまだステップアップの途上である20歳の若手ドライバーながら、スーパーフォーミュラやスーパーGTの舞台で見せ場を作ったことで、既に人気ドライバーのひとりになりつつある小林。そのキャラが急速に注目されていることについては、本人もやや困惑しているようで「これまで感じたことのない視線を感じます。悪い意味で目立つよりは良いと思いますが、ちょっともどかしい……(苦笑)。走りを見てほしいですね」と本音を吐露したが、その走りでも十分すぎるインパクトを残しており、決して“キャラ先行型”ではないだろう。

 これからも小林利徠斗の一挙手一投足から目が離せない。本人がそれを望んでいるかどうかは別として……。

あなたにおすすめ