2,500安打は、坂本勇人にとって“ゴール”なのか。
2026年7月19日時点で、坂本勇人の通算安打は2,462本。歴代右打者では野村克也、衣笠祥雄に次ぐ3人目となる2,500本安打まで、残り「38本」に迫っている。
球界を代表する名遊撃手が大記録へ歩みを進める一方、ファンの間では早くも「達成したら引退するのではないか」という声が上がり始めている。
しかし、話はそう単純ではない。後継遊撃手問題、勝負どころでの存在感、そして球団の興行面──。巨人には、記録達成後も坂本を必要とせざるを得ない現実がある。
果たして2,500安打は“花道”なのか、それとも新たなスタートなのか。巨人が抱える「ポスト坂本問題」の真相に迫る。
■ 2,500安打目前 数字が示す坂本勇人の現在地
数字の上では、今季中の2,500安打達成は十分に射程圏内だ。二塁打も立浪和義が持つNPB記録(487本)まであと18本に迫り、5月には劇的なサヨナラ打で通算300号本塁打を達成するなど、節目を鮮やかに彩ってきた。
しかし、坂本本人の成績を見れば、身体的な負担の増加と苦闘は隠せない。かつて首位打者に輝いた2016年には出塁率.433を記録し、2019年には遊撃手として史上最多タイの40本塁打、OPS.971を叩き出した「NPB史上最高の打撃型ショート」も、今季は打率.152、OPS.527と低迷。
スタメン出場は減り、1試合あたりの打席数もかつての4打席以上から2打席程度へと半減しており、6月には15打数無安打10三振と深刻な不振を極めた。
今年37歳。1月の対談番組で本人が漏らした「40歳までやるイメージがつかない」という言葉通り、全盛期と比べると肉体への負荷は確実に大きくなっており、ファンの間で「引き際」が議論されるのも無理はない。
一方で、これほど数字が落ち込んでもなお、巨人が坂本を手放せない理由がある。
■ 坂本勇人を引退させられない3つの理由
坂本本人が引き際を模索する一方で、球団側が簡単に「お疲れさま」と送り出せない背景には、3つの切実な構造的理由が存在する。
① 後継ショート不在の現実
最大の理由は、遊撃手(ショート)の後継者が未だ決まっていないことだ。現在、後継候補には守備力を誇る門脇誠、昨季ベストナインの泉口友汰、増田陸や中山礼都らが争うが、門脇は打撃に悩み、今季打率.227の泉口も定着しきれていない。10年以上主砲として君臨した坂本の基準が高すぎるゆえに、攻守両面で穴を埋めきれない過渡期の痛みに直面している。
② 勝負どころではまだ怖い「一打席の集中力」
フルシーズンを任せる選手ではなくなった。しかし、一打席ならまだ相手に最も嫌がられる打者の一人──。全体打率こそ.152の坂本だが、得点圏打率は.333を誇る。7月17日の中日戦でも9回裏にセ・リーグ歴代最多タイとなる通算8本目の劇的なサヨナラ3ランを放つなど、その威圧感は今なお健在だ。5月に急遽指揮を執ることとなった橋上秀樹監督代行にとっても、代えがたい勝負のカードとなっている。
③ 巨人を支え続ける「絶大な興行価値」
坂本は単なるベテランではない。東京ドームで「坂本を見たい」と球場へ足を運ぶファンは今なお多く、今季球団を代表するスター選手の一人であり続けている。2,500安打という歴史的瞬間は大きなコンテンツであり、引退試合は一時的な盛り上がりを生むものの、その後に訪れる“看板選手不在”という課題も球団としては避けて通れない。若手内野手にとって長年トップレベルで遊撃を守り続けた経験は何よりの教材でもあり、安易に手放せないのが本音だ。
