チェーン店といえば、どの店で食べてもだいたい同じ味――。そんなイメージがあるが、一部店舗には「あの店だけ妙にうまい」といった声も上がっている。その理由を探った。
「綺麗なバックドロップが打てそうなほどコシが強かった」
「さっき代々木八幡の富士そばで食べた冷たいそばと小ちゃいカツ丼が美味すぎて動揺している」
お笑いコンビ・ニューヨークの屋敷裕政がXにこう投稿し、「名代 富士そば」代々木八幡店のそばが注目を集めている。
屋敷はその後、自身のYouTubeチャンネルでも「そばが美味すぎたの。明らかに!」と紹介。同店で食べたもりそばに、かなり驚いた様子だった。
さらに、投稿を見た麒麟・川島明も同店へ。屋敷と同じく、そばと小さなカツ丼を注文し、麺について「綺麗なバックドロップが打てそうなほどコシが強かった」と絶賛した。
同社によると、二人が食べたのは、富士そばの一部店舗でしか提供されていない「乱切り蕎麦」だ。太さの違う麺が混ざっており、均一な麺とは違った食感が楽しめる。
SNSでも「普通の富士そばと違う」「乱切りそばの店に行ってみたい」といった声が広がった。
そこで筆者も代々木八幡店を訪れ、「もりそばとカツ丼(小)のセット」を注文した。
運ばれてきたそばを見ると、麺の太さがそろっていないことはひと目で分かる。細い麺の中に、やや幅のある麺も混ざっている。
食べてみると、まず感じたのは強い歯ごたえと弾力だった。ただ硬いのではなく、しっかり噛み応えがある。
屋敷や川島の絶賛を知ったうえで食べたが、話題だけが先行している印象はなく確かな美味しさを感じた。普通のもりそばを想像して口にすると、少し驚くかもしれない。
富士そばを展開するダイタングループの広報担当者によると、二人の投稿後、代々木八幡店の来店客数と売り上げは、ともに約1.2倍まで伸びたという。
ただ、現在、乱切りそばを提供しているのは15店舗だけ。乱切りそばを扱う店は、店頭に「乱切り蕎麦」と大きく掲げているため、入る前に見分けることができる。
経営陣と各運営会社が、店の周辺環境や客層を見ながら、ほかの店舗との違いを出す方法の一つとして導入を決めている。
乱切りそばは、さらなる売り上げアップを目指し、現在の会長と運営会社のスタッフが、よりおいしいそばを研究する中で生まれた。
富士そばは実は、店舗ごとに味が違う?
実際、導入店では来店客数や売り上げのアップにつながっているという。ただし、立地や客層が店ごとに違うため、通常麺の店との単純な比較は難しく、同社は「店舗ごとの個性の一つ」としている。
では、乱切りそば以外の店は、どこでも同じ味なのか。
SNSでは以前から、「富士そばってチェーン店だからどこも同じ味のはずなのに、店舗によってかなり違うように感じる」「ここの富士そばは明確に違う。妙にうまい」「近所の富士そばと出先の富士そばで味が全然違う。俺がおかしいのか?」といった声が上がっている。
どうやらこれらは、まったくの勘違いとも言い切れないらしい。
同社によると、安定して仕入れるため、通常のそば麺は2社から2種類を仕入れている。つゆに使うかつお節も、2社から2種類を調達しているという。
「これは店舗が任意に選ぶものではなく、供給体制上の理由によるものです。麺やつゆの違いを明確に感じ取られるお客様がどの程度いらっしゃるかについては、把握しかねる部分もございます。
また、店舗限定メニューに使用する調味料・食材につきましては、限定店舗のみで扱っているものもございます。味そのものが違うというよりも、店舗ごとにメニューラインナップが異なる点から、店舗ごとの個性や面白さを感じていただけているのだと思います」(ダイタン商事株式会社 マーケティング・広報 担当者)
店舗限定メニューといえば、2年前、秋葉原電気街店限定の「DX柔らかポークの薬味たっぷり玉子丼」が2300円だったことから、一部で“インバウン丼”と呼ばれ、注目を集めたのも記憶に新しい。
独自メニューは、店長や店舗から提案が上がると、担当マネージャーと運営会社がチェックする。味や見た目だけでなく、食材、原価、衛生面、品質、店で無理なく作れるか、需要があるかなどを検討し、最後は社長が販売の可否を決めるという。
こうした“店ごとの違い”があるチェーンは、富士そばだけではない。

