「今年は俺が予約する」と言われて
結婚10年目の記念日を、2週間前から楽しみにしていました。夫が食卓で「今年は俺が予約する」と言ってくれた時、久しぶりに料理の手を止めて笑ってしまいました。前日には仕立て直したブラウスにアイロンをかけ、行き先を想像しながら畳んで置きました。夫は隣で紙袋を包んでいました。私に見せる素振りはありませんでしたが、記念日のサプライズだと信じて、中身は尋ねずにおきました。
車内で告げられた行き先
当日、助手席に乗り込んだ私に、夫は正面を向いたまま「記念日は毎年やってるだろ、母さんの傘寿は一度きりだ」と口にしました。私はブラウスの襟元を見下ろしました。そして義母宅までの道のり、私は窓の外を見ていました。
傘寿の会は演じ切りました。祝いの言葉も、写真も、笑顔も。夫が包んだ紙袋は、義母の膝の上で開けられていました。帰り道、夫はハンドルを握ったまま「気を遣わせて悪かった」と口を開きました。私は「大丈夫」とだけ返しました。
