少数民族コリャークの村、人口400人のうち男性の7割が戦地に
極東カムチャツカ地方にある少数民族コリャークの村セダンカでは、人口約400人のうち、軍務可能な男性の約7割が戦地に赴いた。多くの戦死者を出し、村は2025年10月、国から「武勲の村」の称号を与えられた。
村の平均月収はモスクワの3分の1以下。軍と契約すれば、250万ルーブル(約520万円)の一時金に加え、月20万ルーブル(約42万円)以上の給与が支給されるという。国家がたたえる「武勲」の陰には、地方の貧困と家族を失った人々の悲しみがある。
ロシア軍が兵力を確保する方法は、戦況とともに変化してきた。
侵攻初期の2022年、戦闘の中心を担ったのは契約軍人だった。同年9月にプーチン大統領が部分動員令を出すと、予備役が大規模に招集された。
これと前後して、民間軍事会社ワグネルは刑務所で受刑者から戦闘員を募集し、一定期間戦えば釈放すると持ちかけ、前線へ送り込んだ。
受刑者部隊は、ウクライナ東部バフムトなどの激戦地で突撃に投入された。メディアゾーナの集計では、2023年3月ごろ、受刑者が戦死者の最大のカテゴリーとなった。短期間の訓練しか受けていない兵士が、ウクライナ軍陣地への攻撃を繰り返し命じられた。
ワグネルの反乱と事実上の解体後も、受刑者の動員は終わらなかった。国防省が募集を引き継ぎ、刑務所は引き続き兵員の供給源となった。
なぜ? 地方で高額報酬を掲げて契約兵を集める手法に依存
ただ、2023年後半以降、戦死者の中心は受刑者から地方の契約兵へ移った。ロシア政府は、国内の反発を招きかねない新たな大規模動員を避ける一方、契約一時金を引き上げ、地方政府にも独自の給付を競わせた。
背景には、国内世論への警戒がある。燃料不足に加え、通信アプリ「テレグラム」への接続規制などを巡って国民の不満が強まり、プーチン大統領の支持率にも陰りが見える。
日ロ外交筋は「今年9月の統一地方選までは、大規模な追加動員に踏み切るのは難しいだろう」とみる。
選挙を前に、都市部を含む幅広い国民へ招集令状を送れば、戦争への不満が一気に噴き出しかねない。とりわけ、首都モスクワやプーチン氏の出身地サンクトペテルブルクで、不満を増大させるわけにはいかない。
このため政権は強制動員を目立たせず、地方で高額報酬を掲げて契約兵を集める手法に依存している。

