JR東日本は2026年3月14日、これまでの「山手線内」「電車特定区間」の割安体系をやめ、全区間で同じ基準の新運賃に切り替える。
山手線内エリア新宿~東京は、交通系ICカード使用で208円⇒253円(以下、ICカードで算出)。池袋~東京、渋谷~上野も208円⇒253円に値上がりする。郊外はさらに差が開き、新宿~八王子はJRが492円⇒616円で、対する京王線は409円。その価格差は大きい。新宿~高尾は571円⇒715円、吉祥寺~渋谷も230円⇒281円となる。日常の数駅から通勤ロングまで、JRを選ぶか私鉄や地下鉄に乗るかで、同じ目的地でも支払いは数十円から数百円単位で変わる。
さらにインパクトが大きいのは定期券だ。6カ月定期で見ると、JR八王子~新宿は7万1950円⇒9万2330円。差額は2万380円、率にして約28.3%増となる。
一方、京王線の京王八王子~新宿は、8万2680円で据え置き。改定後のJRと比べると、6カ月で9650円、月あたり約1608円の差が開く計算になる。年間で定期券を2回更新する前提なら、JRの増分は年間約4万760円に達する。
ここで「通勤費は会社負担だから関係ない」と受け流すのは危うい。通勤手当は報酬に含まれるため、増えた定期代はそのまま社会保険料に上乗せされる。標準報酬月額の等級をまたぐと健康保険・厚生年金の保険料率が一段上がり、手取りがさらに目減りすることがある。会社が運賃を負担してくれても、保険料の従業員負担分は自分の給与から天引きされる点は変わらない。企業が負担するのは運賃まで。保険料の跳ね上がりは、自分の財布に跳ね返る。
改定前の今は、まず手取りへの影響を確認することが大切だ。通勤手当の増額は保険料に跳ね返る可能性があるため、ルートはシンプルに組み直す。都心は地下鉄を基本とし、郊外は私鉄でコストを抑え、時間短縮が必要な区間だけJRとする…などだ。ただし本数とダイヤの安定はJRの強みなので、完全に外すのは現実的ではなかろう。
将来の年金がわずかに上振れする面はあるとしても、当面の家計は別問題だ。運賃・定期・社会保険料を合算した「総コスト」で見直し、通勤経路は前もって組み替えておきたい。
(ケン高田)

