
朝ドラ『ばけばけ』主人公のトキを演じる高石あかりさん。画像は「高石あかりファースト写真集 幻灯」(東京ニュース通信社刊)発売時の写真
【画像】え、北川景子級? コチラがお母さん(実母)が「松江随一の美女」と言われた実際の小泉セツさんです
鳥取に伝わる昔話が「悲しすぎ」
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、1890年に来日し『怪談』『骨董』などの名作文学を残した小泉八雲さん(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、彼を支え数々の怪談を語ったという、妻の小泉セツさんの生涯をモデルにした物語です。
本作の第3週13話では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が鳥取の旧士族の婿「山根銀二郎(演:寛一郎)」から聞いた、「鳥取の布団」という怪談の話題が出てきました。こちらは、11話で銀二郎がトキに語っていた、「人の薄情のせいで幼い兄弟が死んだ」話です。トキは病床の実の父「雨清水傳(演:堤真一)」にも、この物語を語って聞かせていました。
「鳥取の布団」は、アニメ『まんが日本昔ばなし』でも、「ふとんの話」というタイトルで放送されており(1976年7月24日)、SNSでも懐かしむ声が出ています。改めてどんな物語なのか、おさらいしましょう。
※ここから先の記事では『ばけばけ』の今後のネタバレにつながる、史実の情報に触れています。
「鳥取の布団」は、ラフカディオ・ハーンさん(1896年に小泉八雲に改名)の代表作のひとつ『知られぬ日本の面影』(1894年発表)のなかにも出てくる、鳥取の昔話です。同書には夫婦となった八雲さんとセツさんが、1891年8月に鳥取へ旅行に行った際の紀行文「日本海に沿って」が収録されており、「鳥取の布団」は現地で聞いた物語として紹介されています。
そのあらすじは、このようなものです。
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あるとき、鳥取に新しくできた宿屋に泊まった旅商人が、奇妙な体験をします。布団のなかから、「あにさん寒かろう」「お前も寒かろう」という子供の声が聞こえてきたのです。
商人はそのことを宿屋の主人に話しますが、主人は酒に酔っていた商人の勘違いだろうといいます。しかし、その後も同じような話をする客が現れ、あるとき主人も1枚の薄いかけ布団から、子供の声がするのを聞いてしまいました。
主人は問題の布団がどこからきたものなのか、方々を巡って探ります。すると、ある悲しい話が明らかになりました。
その布団はある小さな貸屋の家主から買い取ったもので、もとは両親と男の子ふたりの家族が所有していたそうです。その一家は父母が病気で相次いで亡くなり、残された兄弟は家財を売って食いつなぐも、手元には薄い布団1枚しかなくなってしまいました。
そしてある大雪の日、兄弟が布団にくるまって寒さをしのいでいると、冷酷な家主がやってきて布団を奪い取り、ふたりを屋外に放り出します。その後、兄弟は凍死してしまいましたが、神様がやってきて、彼らの身体に真っ白い新しい布団をかけてあげました。しばらくして発見されたふたりの遺体は、千手観音堂の墓地に葬られたそうです。
そんな話を聞いた宿屋の主人は、かけ布団を寺に持っていき、お経をあげてもらいました。それ以降、布団から声がすることはなくなったといいます。
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八雲さんは上記の「鳥取の布団」の話を、鳥取旅行で訪れた浜村温泉の宿の女中から聞いたと記していますが、『新編 日本の面影』(2000年出版)を翻訳した英文学者の池田雅之さんや、八雲さんのひ孫である小泉凡さんによれば、実際はセツさんが八雲さんに語ったのではないかという説が有力だそうです。
1868年、生後7日で生家の小泉家から親戚の稲垣家に養子に出されたセツさんは、1886年の18歳のときに、鳥取の旧士族の前田為二さんという男性を婿養子に迎えて結婚しました。セツさんは、自分と同じく物語好きだった為二さんから、「鳥取の布団」の話を聞いたそうです。
その為二さんは、多額の借金を抱えている稲垣家の窮状に耐え兼ね、1887年に出奔してしまいました(その後の1890年に正式に離婚、セツさんは小泉家に復籍した)。セツさんは八雲さんとの鳥取旅行のなかで、前夫の為二さんから聞いた「鳥取の布団」の話を思い出して語ったのかもしれません。
『ばけばけ』でもいずれ、トキが銀二郎から聞いた「鳥取の布団」の怪談を「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストゥ)」に話す場面が出てくると思われます。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(著:長谷川洋二/潮出版社)、『セツと八雲』(著:小泉凡/朝日新聞出版)、『新編 日本の面影』(著:ラフカディオ・ハーン/訳:池田雅之/KADOKAWA)
