■ 「勝ちたいGM」と「金を使いたくないオーナー」──村上の活躍が炙り出すフロントのズレ
しかし、オーナーのラインズドルフ氏にとっては事情が異なる。同氏は実業家ジャスティン・イシュビア氏との間で、2029年から2033年にかけて支配株を譲渡・売却する長期的な合意を結んでいるとされる。オーナー側の基本路線は「売却完了までは余計な長期負債を抱えず、引き渡し時の財務状況をクリーンに保つ」という点にある。
「勝つために投資したい」現場と、「売却に向けて余計な支出を抑えたい」オーナー側。村上の活躍が引き起こした快進撃は、フロント内部における優先順位の乖離をくっきりと浮かび上がらせている。
■ 2027年FAと球団売却のズレ──村上宗隆は“高額長期契約という負債”になるのか
さらに経営陣を悩ませる可能性があるのが、村上自身の契約期間(2027年シーズン終了後にFA資格取得)と、球団の売却スケジュールの不一致だ。
もし村上がこのまま本塁打を積み重ね、メジャー屈指の主砲としてチームを勝利させ続ければ、2027年オフには年俸数十億円規模の超大型かつ長期の契約更新を要求されることは確実だ。
しかし、2029年からの売却プロセスを控える時期に、これほど高額な長期契約を抱え込むことは、買収側に対して「重い固定負債」を引き継がせることを意味する。かといって、チームを首位に導く最大のヒーローをあっさり放出(トレード)すれば、ファンや現地メディアからの激しいバッシングは免れない。
「低予算で売却に備える」を目指していた経営戦略において、村上宗隆という存在はあまりにも大きな価値を持ちすぎてしまったのだ。
