送信ボタンを押した後で、俺は自分の書いた文字数を数えてしまった
若手のチェックは以前から俺が担当しています。あの日付欄に気付いた瞬間、頭に浮かんだのは10年近く前の自分の姿でした。同じような日付ミスで、クライアントの担当者から「今後の御社との取引について社内で協議します」というメッセージをもらった夏があります。結局その1社との取引はそこで終わりました。あの時に上司からもらった短い注意で済ませてもらった分、俺は同じ間違いを、後輩のうちに正させたかったのです。
既読が4つ並んだ画面を見て、送るべき長さではなかったと気付いた
送信ボタンを押した直後、既読を示す表示が下から順に灯りました。自分の書いた文面の長さに気づいたのはそのときです。ミスの箇所を指摘するだけなら、短い一言で済んだはずでした。それを、俺は自分の若手時代の失敗まで持ち出して、彼女の画面を占領させてしまったのです。返信は来ませんでした。しばらくして、既読の表示は変わらないまま、彼女のアカウントの緑色の点も消えました。彼女がスマホを閉じたのだと分かって、俺は「送るべきではなかった」を最後まで打ち込む前に、椅子の背もたれに深くもたれました。
