共働きでないと住宅を買えない現代、大手町に近い「東」こそが正解
逆に中央線沿線の伸び率は限定的だ。錦糸町駅のマンション価格が過去10年間で8割以上高くなっている一方、三鷹駅や吉祥寺駅といった昔ながらの人気駅は5割程度と、「東」側がグングンと追い上げていることがわかる。
これは中央線に限った話ではなく、田園都市線などのかつての人気路線も同様だ。三軒茶屋や二子玉川といった、比較的都市部に近い街はまだまだ健闘しているものの、たまプラーザや青葉台といったかつての人気エリアの凋落は激しい。
「東京と神奈川の子育て支援策の格差もあり、高級住宅街だからといってわざわざ青葉台を選ぶ人は少ない」とA氏は断言する。共働きでないと住宅を買えない現代において、大手町に近い「東」こそが正解であり、「西」側は廃れつつあるというのは中長期的なトレンドなのだ。
もう一つのファクターも見逃せない。それは西側のターミナル駅の衰退だ。中央線といえば新宿駅だが、インバウンドで賑わう東口はともかく、西新宿のオフィス街には新しいビルが少ない。
三菱地所の手掛ける大手町や丸の内、三井不動産が街づくりを進める日本橋、森ビルが再開発に取り組む港区内陸部と比べても、大型の新しいビルが少なく、活気がないことは明白だ。
オフィス仲介を手掛ける外資系企業に勤めるB氏は「リモートから出社へと回帰が進む中、オフィスの立地は福利厚生として重要視されるようになっている。西新宿をわざわざ選ぶ企業は稀だ」と断言する。
衝撃!「西新宿の主」が浜松町へ
こうした状況を象徴するような出来事が、2025年の野村不動産グループによる本社移転だ。野村不動産といえば西新宿に本社を置いており、中央線や京王線など新宿に近いエリアで数多くのマンションを手掛けてきた。
「西新宿の主」である同社が新たな本社として選んだのは、よりによって港区の浜松町だった。再開発で新たに建てられたピカピカのビルは新名所となり、湾岸のタワマンエリアとは船便でつながっている。
野村不動産の社員であるC氏は「新宿勤務を前提に中央線や京王線沿線に家を買った社員も多いのに、本社移転で通勤時間が30分以上伸びたベテラン社員も多い。一方で湾岸エリアのタワマンや晴海フラッグを買った若い世代も多く、中年が新社屋に文句を言う一方で若い世代は移転を歓迎している」と明かす。
SNSを見ても、現在も西側を支持しているのは、比較的上の世代であることが多い。

