自民党と日本維新の会による10月15日の党首会談で、連立協議を16日から開始することが決まったが、これに慌てているのは公明党だろう。公明党の斉藤鉄夫代表は15日のBS11の番組で、自民と維新の合意について聞かれると、
「数合わせではない、きちっとした政策協議がなされることを望む」
と牽制してみせたものの、内心は焦っているとみられる。
それもそのはずだ。公明党は連立からの離脱を決めた時、自民党・高市早苗総裁体制は早晩、行き詰まるとみていたからだ。
というのも、小泉進次郎農水相が総裁選で勝つと踏んで、水面下で小泉陣営と折衝してきた維新としては、アテが外れた格好で、高市氏とは距離を置く姿勢を示していた。そして高市氏の後ろ盾である麻生太郎副総裁は、国民民主党との連携を重視した。
だが、高市氏や麻生氏から連立参加への秋波を送られてきた国民民主党は前提が崩れたとして、自民党との連立に否定的な姿勢を示す。公明党としては「してやったり」だった。
斉藤鉄夫代表は首班指名選挙について、1回目の投票で斉藤氏の名前を書き、決選投票になれば自らの名前を書くか棄権する考えを示していた。ところが西田実仁幹事長は10月13日のテレビ番組でこれを軌道修正し、
「全ての可能性はありうる。いろいろな事情を見て決めたい」
と言い出した。野党候補の一本化が実現した場合はそれに賛同することもありうる、との認識を示した形だ。
立憲民主党と日本維新の会、国民民主党に公明党が加われば234議席と、衆院過半数(233議席)を上回る。公明党は企業団体献金規制問題などで国民民主党と連携してきた経緯があり、国民民主党の玉木雄一郎代表に首相一本化となれば乗りやすかった。立憲民主党内からは、
「かつての非自民で公明党も加えた新進党の再来となる」(ベテラン議員)
と、3党連携への期待が高まった。
ところが公明党が皮算用している間に、高市陣営と維新は急接近。自民党と維新が協力すると231議席と過半数に近づき、決選投票で公明党が立憲民主党や国民民主党などと協力しても追いつけない。
公明党は連立離脱で小選挙区から一部撤退する方向で検討に入ったが、自民党と維新が連携した場合、昨年秋の総選挙で勝利した4つの小選挙区のうち、兵庫県の2つの選挙区も厳しくなるのは必至だ。小選挙区からの全面撤退を余儀なくされる可能性が出てきた。
さらに比例代表選では自民党候補に対し、協力する前提として「小選挙区は自民、比例は公明」を訴えてきた経緯があり、自民党から流れた票が大幅に減ることになる。現在の24議席から大幅に減るのは避けられない情勢だ。これでは何のために連立離脱したのか、まるでわからなくなる。
「反高市」が多いリベラルメディアからは擁護されてきた公明党だが、自民と維新の連携が実現した場合、連立離脱を決めた斉藤代表やそれを支持(指示!?)した支持母体、創価学会の幹部の責任が問われる事態になりそうだ。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)

