
性的な妄想していると、突然「ハクション!」とくしゃみが出る。
冗談のような話ですが、これは実際に多数の報告が寄せられている現象です。
恥ずかしいから秘密にしてたけど、「自分もそうだ!」という人もいるのではないでしょうか?
この現象は「性的誘発性くしゃみ(Sexually induced sneezing)」と呼ばれています。
なぜ性的妄想をすると、くしゃみが出てしまうのか?
この科学的理由は、まだ正確には突き止められていません。
しかし研究は少しずつ進んでおり、いくつかの仮説も提示されています。
それらの仮説について、見てみましょう。
目次
- 数百年前から知られていた現象だった
- 性的妄想でくしゃみが出る「有力な仮説」
- そのほかの仮説とは?
数百年前から知られていた現象だった
「性的なことを考えると、くしゃみが出る」
この奇妙な現象が報告され始めたのは、ここ数年の話ではありません。
1898年に発表された論文では、ある医師が、16世紀以来、「美しい少女」を見たときにくしゃみをする男性や、「性交中にくしゃみをする」人々、さらには性行為や自慰行為の最中に鼻血を出す患者の事例が記録されてきたと述べています。
また1972年には、69歳男性の症例が報告されています。
この男性は、オーガズムに達した直後に、何度も激しいくしゃみが出てしまうとのこと。
研究者たちは、「性的な反応」と「くしゃみ」の関係が医学界ではあまり認識されていない一方、恥ずかしさから医師に相談しない人が多いのではないかとも考えています。
そこで研究者らは、2007年6月と12月、Googleを使ってインターネット上の掲示板やチャットルームを調査。
その結果、男女17人が「性的なことを考えた直後にくしゃみが出る」と投稿していました。
さらに別の3人は「オーガズムの直後にくしゃみが出る」と報告していました。
関連する投稿への返信にも、自分にも同じ現象が起きると書き込んだ人が複数見つかっています。
興味深いことに、調査で見つかった範囲では、性的な想像によってくしゃみをする人と、オーガズム後にくしゃみをする人は重なっていませんでした。
そのため研究者たちは、この2つが異なる反射現象である可能性も示しています。
ただし、これは匿名のインターネット投稿をもとにした傾向です。
投稿者の症状は医師によって確認されておらず、17人と3人という数字から、この現象が人口の何%に起きるのかを判断することはできません。
性的妄想でくしゃみが出る「有力な仮説」
通常のくしゃみは、ほこりや花粉などが鼻の粘膜を刺激することで起こります。
鼻で受け取られた刺激情報は、三叉(さんさ)神経を通って脳幹へ伝えられ、脳は胸や腹、喉などの筋肉をいっせいに動かします。
その結果、鼻や口から空気を勢いよく押し出す「くしゃみ」が起きます。
ところが、世の中には鼻への直接的な刺激がなくても、くしゃみが出る人がいます。
例えば、暗い場所から明るい場所へ出たときにくしゃみが出る「光くしゃみ反射」があります。
また、満腹になるとくしゃみが出る人も報告されています。
こうした奇妙なくしゃみは、複数の神経信号が互いに影響し合うことで起きている可能性があります。
研究者たちが「性的誘発性くしゃみ」の原因として注目したのが、心拍や消化、瞳孔、鼻水の分泌などを無意識に調節している「自律神経系」です。
性的なことを考えたり、性的に興奮したりすると、自律神経系の一部である副交感神経が働き、生殖器への血流や分泌反応を変化させます。
研究者たちは、このとき本来は生殖器へ向かうはずの神経活動が、鼻の分泌を調節する経路にも及んでしまうのではないかと考えました。
すると鼻の粘膜で分泌が起こり、それが刺激となって、くしゃみ反射が作動する可能性があります。
研究者たちは、このように一つの器官に向かう副交感神経の活動が、別の器官の反応まで引き起こす仕組みを「副交感神経性加重」と呼んでいます。
簡単に言えば、性的な妄想に反応した神経のスイッチを入れたところ、近くにある「鼻水やくしゃみのスイッチ」まで一緒に入ってしまうという説明です。
ただし、神経信号が実際にこのように伝わっている様子が科学的に観察されたわけではありません。
あくまで、既存の知識から組み立てられた仮説です。

