不安症、アルコール依存症と診断されながらも、酒をやめられなかったスーパーマラドーナ・武智さん。そんな生活に終止符を打つきっかけとなったのは、映画館で起きた出来事だった。禁酒を決意した転機、さらに禁酒生活をYouTubeで発信し続ける理由まで――。回復の途上にある現在の思いを聞いた。(前後編の後編)
真っ暗な映画館で汗が止まらず…
上沼恵美子さんへの不適切発言をめぐる騒動を機に、アルコール依存が深刻化した日々を明かしたスーパーマラドーナの武智さん。昨年、パニック症をきっかけに禁酒を決意した転機と、その後の人生に迫る。
──アルコール依存症と診断を受けてからも処方薬を服用しながらお酒を飲むなど、なかなかお酒がやめられなかった武智さんですが、よく禁酒できましたね。
武智(以下同) きっかけは当時、大ブームになっていた映画を観に行った日のことです。二日酔いのまま映画館へ行って、ジュースを買おうとしたら、買い方がわからなくなってしまった。
皆が当たり前のようにしていることが自分にはできないって事実に、急に汗が止まらなくなったんですよ。
戸惑いながら席に着いたんですけど、館内が暗くなった瞬間でした。心臓が締め付けられるような感覚に襲われて。「ここにおられへん」と思って映画館を飛び出しました。
後日、心療内科の先生から「それはパニック症だ」と告げられました。
不安症に続き、今度はパニック症まで発症してしまった。駐車場でぜいぜいと息を切らしている自分が情けなくて。
「このまま酒を飲み続ける人生なんか。それとも、今日で終わらせるんか」
しばらくそう自問した末に、答えを出しました。「もう、やめよう」と。
──体のことを考えると禁酒は大切です。一方で、お酒のメリットもあります。
「人とのつながり」という意味では、お酒は間違いなくプラスです。先輩とも仲良くなれるし、テレビ局の方やスタッフさんとも距離が縮まる。
実際、お酒の席で仕事のきっかけを得ることもありました。だから「飲めるほうが得か、損か」と聞かれたら、得な部分はあると思います。
敵だったはずのネットが、今は支えになった
──お酒は、一種のコミュニケーションツールでもありますもんね。
そうですね。特に芸人って、劇場が終わったあとに皆で飲みに行く文化がありますから。先輩の話を聞いたり、そこでかわいがってもらえたり。だから、お酒そのものを否定する気は全然ないです。
ただ、一方で「酒を飲んだから面白くなるか」というと、それは違う。酔った勢いで「これ面白い!」と思って書いたネタを翌朝見返したら、「全然おもんないやん」ってなりますし(笑)。
実際、『M-1』で頂点を目指していた時期は、お酒どころじゃなかったです。「酒を飲まないと面白くなれない」ということは、絶対ないと思います。
「酒を断つと芸人として弱くなる」という不安は全然なかったです。むしろ、今のほうが頭はすっきりしていますし、人の話もちゃんと聞けるようになりました。
──武智さんが、ご自身の禁酒生活をSNSで発信しようと思った理由は?
最初は記録のつもりでした。ただ、上沼さんの件がトラウマになっていて、「禁酒生活を発信しても、どうせまた叩かれるんやろうなあ」と思ってたんです。
でも、始めてみたら全然違いました。「頑張ってください」「応援しています」。そんなコメントばっかりやったんです。そこで、自分と同じようにアルコール依存症で苦しんでいる人が、たくさんいることも知りました。
以前は恐怖の対象でしかなかったネットでしたが、今ではそこに書かれたコメントが支えになっている。不思議な感覚です。
今ね、お酒を飲みたくなったらコメント欄を見てグッと、とどまるんですよ。「ここで飲んだら応援してくれている人を裏切る」と思えるんで。
毎日午後6時に動画を更新しているんですが、更新を毎日にしたのが結果的によかったんですよね。もし週1回の更新やったら、たぶん誘惑に負けて飲んじゃっていたと思います。

