内閣支持率の急落について「原因はわからない」と語った高市早苗首相。野党などから強引との批判が出た特別国会の運営についても、「反省点というのは特にございません。とにかくがむしゃらに頑張ってまいりました」と強気の姿勢を崩さなかった。しかし今、「消費減税」と「内閣改造・党役員人事」が新たな火種となりつつある。
高市減税に広がる党内異論
「最善と考えられるものを選択した」
高市総理は7月30日に首相官邸で記者団にそう語り、飲食料品の消費税率を2027年4月から、8%から1%に引き下げる方針を表明した。ただし、消費税率の引き下げは2年間に限ったもので、「(2年後には)私が責任を持ち、確実に税率を戻す」と語った。また、中低所得者に消費税1%相当の範囲内で所得連動型給付を行い、「実質ゼロ」にするという。財源については明示しなかった一方で、赤字国債には頼らないと説明した。
しかし、こうした高市総理の動きに対して、自民党内から異論が公然と出ている。
「今年2月の衆院選の初当選組や、一部の復活当選組は『高市チルドレン』ですから、賛成意見が多いのですが、その一方でベテラン議員らが反対しています。
小渕優子元選対委員長は消費税の引き下げに反対し、税調の非公式幹部会合「インナー」のメンバーを辞任。河野太郎元外相も、物価引き下げ効果が疑わしいとした上で、現金給付が望ましいとの考えを示しています。
さらに石破茂前総理は鳥取県内の講演会で『代わりの財源を示さなければ無責任』と厳しく批判しました。森山裕前幹事長も日本テレビの取材に対して懸念を示しました。古川禎久幹事長代理も、社会保障の財政基盤を揺るがしかねないという意見書を提出しています」(全国紙政治部記者)
7月31日の税調幹部会でも反対論が相次ぎ、小野寺五典税調会長は会合後、記者団に対して「6対4くらいで反対が多かった」と明かしていた。
「稲田朋美元防衛相は財源が不透明だとした上で、給付にすべきだと指摘しました。さらに、重大だったのが、こうした“財政規律重視派”以外からも懸念の声が出たことです。党内きっての“積極財政派”として知られる西田昌司参院議員からも懸念が示されたのです」(同前)
「石破前総理の二の舞に」
党内保守派の西田氏は、過去2回の自民党総裁選で支援し、高市首相と近い関係にある。そんな“身内”が諫言したのはなぜか? 自民党税調関係者が明かす。
「税理士出身の西田さんは消費減税自体には賛成の立場ですが、今回のように2年間に限定して、拙速に進めようとするのは混乱を招くだけだと懸念を示しています。まずは物価高対策としてスムーズにできる現金給付をして、その間に経済をよくするための税制全体の仕組みの議論をしっかりとしてから決めるべきだと言っている。
彼の考えとしては、消費税を恒久的に下げて、その分、法人税を引き上げる。その上で、企業に単年度償却を認め、投資を促すべきだという主張です。ただし、そのためには議論の時間が必要です」
実は、西田氏のような、自民党の積極財政派の一部も、今回の高市総理の減税論には違和感を感じているようだという。
「そもそも積極財政とは、政府が国債発行により、税収以上にお金を使って、経済を回していこうという考え方のはず。ところが同じく積極財政主義者のはずの高市総理は今回、赤字国債に頼らず、予算の組み替えで対応する方針と言っている。党内の積極財政派の中には、高市総理の説明は『積極財政論としても論理矛盾があるのではないか』という思いもあるのでしょう」(同前)
朝日新聞の報道によると、西田氏は「正しくその場の状況を把握していただかないと、(少数与党で国会運営に苦しんだ)石破前総理の二の舞になる」と危機感も示したという。自民党のベテラン議員は、その真意をこう見ている。
「自民党は今年2月の衆院選で、食料品の消費税ゼロ化に向けて検討を加速すると公約に明記。その後の超党派の社会保障国民会議で議論を進めてきましたが、野党との意見集約は叶いませんでした。しかも、参院は未だに少数与党なわけです。このままいけば、野党が参院で消費税の引き下げに関する法案に、軒並み反対する可能性がある。
高市総理は、衆議院で可決された法律案を参議院が60日以内に議決しない場合、衆院で再可決できるという『60日ルール』を使えばいいと思っている節があるが、そんな簡単な話じゃない。そんなことをすれば野党との亀裂は深刻になり、今後の国会運営の大きな障害となる。さらに、調整に汗をかいている参院自民党の顔も潰すことになり、自民党のまとまりも損ないかねない」

