【江戸時代のアウトローを演じる長澤まさみ】
お栄の着物姿は男性のような着流しスタイル。これが高身長でスタイルのいい長澤さんに似合っているんですよ。またお栄は言葉遣いが悪く、愛想もないし態度もでかいのですが、それでも嫌な印象がないのは、長澤さんが正直に生きるお栄を大切に丁寧に演じているから。
お世辞など絶対に言わないからこそ、彼女が絵について何気なく発する言葉にはハッとさせられました。江戸時代にこんなかっこいいアウトローな女性がいたなんて……驚きです!
【永瀬正敏さん、髙橋海人さんもいいけど…】
永瀬正敏さんが演じる北斎も自由奔放で、絵を描くこと=人生のような人。永瀬さん自身も写真家というクリエイターの一面もあるので役にピタリとはまっていました。
また、髙橋海人さん演じる渓斎英泉は、北斎の弟子でお栄の友人。可愛げと愛嬌のある男で、髙橋さん自身と重なるような印象がありましたし、何しろイケメンなので眼福!
というように、俳優陣も華があるし、キャラクターも魅力的なのですが、私個人としては物語に起伏が少ないような気がしました。
なぜかというと、周囲に理解者が多く、お栄に対して “仕掛けてくる人” がいないからではないかと。女性絵師が才能を開花させることが難しかった時代。その憤りや情熱を燃やせる場面がほしかったなあと。原作ベースの作品であること、実在の人物を描く難しさはあったとは思いますが、もう少し「どうなるのだろう」と思わせる何かがほしかったな〜。
ただ、長澤まさみさんの素晴らしさを堪能する映画としては大正解かもしれません。“江戸に生きるかっこいい長澤まさみ” をぜひスクリーンで堪能してください。
執筆:斎藤 香(c)Pouch
『おーい、応為』
2025年10月17日(金)より全国ロードショー
監督・脚本:大森立嗣
出演:長澤まさみ 髙橋海人 大谷亮平 篠井英介 奥野瑛太 寺島しのぶ 永瀬正敏
原作:飯島虚心 『葛飾北斎伝』(岩波文庫刊) 杉浦日向子 『百日紅』(筑摩書房刊)より「木瓜」「野分」
(c)2025「おーい、応為」製作委員会

