半年前から楽しみにしていた花火大会
この花火大会は、私が半年前から彼を誘って決めた予定でした。会場は想像より混んでいて、私たちは川沿いの通路で立ち見をしていました。もともと彼は人の多い場所が得意ではありません。肩がぶつかるたびに眉をひそめ、打ち上げの合間には人波ばかり気にしていました。「どうしたの」と聞いても、「いや、なんでもない」と返すだけです。
「帰るぞ」と引かれた手首
次のプログラムが始まる直前でした。彼は私の返事を待たずに「帰るぞ」と言い、手首をつかんで歩き出しました。人の間を縫うように、来た道とは別の方向へ進んでいきます。人混みに耐えられなくなったんだ。そう思った私は、腕を引き戻しながら言いました。
「人混みが嫌なら、最初から来なければよかったじゃない」
それでも彼は歩く速さを緩めません。お目当ての花火が、背中の向こうで上がり続けていました。
