主役はいつも彼だった
付き合って2年になる彼との会話には、決まった流れがあります。私が話し始めると、途中で彼が「で、俺の場合はさ」と引き取り、気づけば話題は彼のものになっているのです。映画の感想も、友人とのすれ違いも、着地点はいつも彼の思い出話でした。悪気が見えないぶん、指摘する言葉を選べないまま、私は相づちの回数だけを増やしていきました。
言いかけた報告
その日は、昇進につながる面談の結果を伝えるつもりでした。「実はね、面談で」と切り出した後、彼は「で、俺の場合はさ」と後輩の指導について話し始めました。運ばれてきたパスタが冷めていく間に、彼の職場の人間関係を3人分覚えました。私はフォークを置き、かばんからスマホを取り出して、動画アプリを開きました。
