変わりゆく気候、健康意識の向上――時代に合わせて、甲子園もまた変化を求められている。その代表的な議論が7回制導入だ。果たして高校野球が7イニングになることでどのような弊害が生まれるのか。
『システムで読む甲子園 25年分のデータで解き明かす「勝利と成長」の条件』より一部を抜粋、編集してお届けする。
「7回以降に試合が動く」の可視化
高校野球の最大の醍醐味として広く認知されているのが、試合終盤、すなわち8回から9回にかけて引き起こされる劇的な逆転劇や、限界を迎えた投手と打線の極限の攻防である。
7回制の導入を議論する上で最も重要な論点は、「実際に試合終盤でゲームは動いているのか」という客観的事実の確認である。2000年から2025年までの詳細な試合データスコアを解析することで、この問いに対する明確な解答が得られる。
本分析における「試合が動く」という現象を定量化するため、以下の厳密な基準が設けられた。
第一に「逆転数」である。これは、7回以降に「負けていた状態」からリードを奪った回数をカウントしたものであり、1試合中に2回逆転が起きれば「2」と記録される。
第二に「勝ち越し数」である。これは、7回以降に「同点の状態」からリードを奪った回数をカウントしたものである。
第三に、7回以降に「負け状態から同点に追いつき、さらに勝ち越す」という展開が発生した場合は、逆転と勝ち越しの両方に「1」がカウントされる仕様となっている。
2000年から2025年までの25年間(計1213試合)において、6回以前の1試合あたりの平均得点率(両校合計)は「6.02点」である。これを6イニングで割ると、1イニングあたりの平均得点は約1.00点となる。
次に、試合の帰趨を決する「7回以降」のデータを確認する。7回以降の1試合あたりの平均得点率は「3.11点」である。7回から9回までの3イニング(後攻チームがリードしている場合の9回裏なしを考慮すれば実質2.5イニング程度)で3.11点が入っている計算になり、1イニングあたりの得点効率は6回以前(約1.00点)と比較して、終盤(約1.03~1.24点)の方が明らかに上昇していることが読み取れる。
これは、終盤になるほどスコアが動きやすいという野球の定説を統計的に裏付けるものである。
逆転率と勝ち越し率でわかる「終盤のドラマ」の消失可能性
さらに決定的なのは、試合の勝敗がひっくり返る、あるいは均衡が破れる確率である。2000年から2025年までの全データにおいて、7回以降に「逆転」が発生した試合の割合の逆転率は17.23%に達している。さらに、同点から「勝ち越し」が発生した割合の勝ち越し率は27.29%である。
この数字の持つ意味は極めて重大である。逆転劇と勝ち越し劇を合わせた事象は、全試合の約44.5%という高確率で7回以降に発生しているのである。
とりわけ直近の2021年から2025年にかけては、勝ち越し率が31・51%に上昇しており、2025年単年のデータでは勝ち越し率が平均42.55%というう驚異的な数値を示している。これは、高校野球の試合のほぼ半数が、7回以降の攻防によって最終的な勝敗を決定づけられていることを意味する。

