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[本田泰人の眼]ブラジルに歴史的な初勝利。選手は大喜びしていたが、少し浮かれすぎではないか。前半の2失点にもっと注目すべきだ

[本田泰人の眼]ブラジルに歴史的な初勝利。選手は大喜びしていたが、少し浮かれすぎではないか。前半の2失点にもっと注目すべきだ


 日本代表は10月14日、ブラジル代表にホームで3-2と見事勝利した。

 試合前日、サッカー評論家のセルジオ越後さんとイベントでご一緒させていただいた。休憩中に話題になったのは、もちろん翌日のブラジル戦についてだ。

 過去の対戦戦績は0勝2分11敗。13試合戦って一度も勝ったことがない。しかも、ブラジルは4日前の韓国戦で5-0と圧勝していた。

 怪我人などにより選手の入れ替えや調子の波があったとしても、腐ってもブラジルだ。対して、破壊力のある攻撃陣を迎え撃つ日本の3バックは、決して主力が揃っているとは言えないメンバー。何点取られるのか……試合前から不安が募るばかりだった。

 日本戦はどんな試合になるのか。単刀直入に、セルジオ越後さんに聞いたところ、意外な答えが返ってきた。

「今のブラジルは史上最弱。良い選手がいない。日本のディフェンス陣は怪我人が多くてやばいけど、ブラジルはもっとやばい。勝てるとしたら、明日が絶好のチャンスだよ」

 ブラジルに対してネガティブな言葉が続いたのだが、その言葉どおり、日本がブラジルから歴史的な初勝利を手にしたのは驚きだ。

 もっとも、前半を0-2で終えた時は、まさか45分後に3-2のスコアになるとは想像していなかった。

 セルジオ越後さんの予言は外されたか…。そんな気分にさせられた。

 韓国戦から先発8人を変更しても、前半のブラジルは圧倒的にボールを支配。日本が最終ラインに5人を並べて守っても、その隙を突いてきた。しかも、セットプレーの飛び道具ではなく、流れるようなコンビネーションプレーから26分、32分と立て続けにゴールを奪ってみせたのだ。

 あと何点取られるのだろう。そんな不安が脳裏をよぎったが、良く言えばあの流れから前半を2点で抑えられたのは大きかった。
 
 サッカーの世界では、2点はセーフティリードではない。次のゴールをどちらが取るかがポイントだと思っていた。

 後半、引いて守った前半とは一転、日本は前線からプレスをかけて勝負に出た。そこでブラジルの最終ラインの不安定さが露呈。52分、キャプテンマークを巻いた南野拓実が前線から激しくボールを追い、行き場をなくした相手CBのミスを誘ってパスをカットし、「次の点」を日本が手に入れた。

 これが勝負の分かれ目となったわけだが、すべてはブラジルで14番を背負うCBファブリシオ・ブルーノのミスから、日本の大逆転劇は始まった。

 ブラジルの最終ラインは酷すぎだ。日本のハイプレスが良かったとはいえ、まさかセレソンが相手選手にプレゼントパスを出すなんて。油断、集中力の欠如、判断ミスが重なった完全なる失態だ。

 ファブリシオ・ブルーノは2失点目にも関与。中村敬斗が放ったボレーシュートをクリアし切れず、同点ゴールを与えた。失点させまいと懸命にプレーした結果なのであまり責めたくないが、ミリトン、マガリャンイスと比べても安定感を欠いていたのは否めない。

 MVP(Most Valuable Player)とは反対のMWP(Most Worthless Player)があるならば、間違いなくファブリシオ・ブルーノが受賞するだろう。

 相手GKも酷かった。この日が代表デビュー戦だったが、71分に伊東純也のCKから上田綺世の放ったヘディングシュートは、GKの正面だったにもかかわらず防ぎきれなかった。しかも、飛び出さなかった判断もミスと言わざるを得ない。

 セレソンレベルでもミスはつきものだが、彼らはコアメンバーではないため、W杯本番ではこのようなミスは起きないだろう。しかし、2-3の逆転劇の背景には、こういうラッキーなゴールがあったことも見逃せない。
 もちろんブラジルに勝った日本は賞賛に値するが、セルジオ越後さんが言うように、今のブラジルには絶対的な強さはない。しかもラッキーなゴールが重なった。

 試合後、選手たちは優勝したかのように大喜びしていた。歴史的勝利を手にしたがあくまで親善試合で、しかも相手は「史上最弱」のブラジル。少し浮かれすぎではないか。あくまで目標はW杯優勝。史上最弱のブラジルに勝ち、冷静になって試合を振り返ってみれば、素直に喜べないはずだ。

 ブラジルらしいサッカーを見せていた前半の2失点にもっと注目すべきだ。1失点目は鈴木淳之介のミス。後半勝ち続けた、1対1のデュエルには合格点をつけられるが、失点シーンではパサーに食いつかず、カバーリングに回るべきだった。

 谷口彰悟は怪我から復帰したばかりだからか、やや安定感に欠いた。ライン統率はできていたが、1失点目で浮き玉のスルーパスを出された時、カバーリングが遅れている。

 渡辺剛も厳しい。最後まで足をつりながら奮闘したが、2失点目のシーンは”感じていない”といけない。ヴィニシウスの動きしか目に入っていなかったのか、完全にボールウォッチャーになっていた。準備と予測ができていなかったのはCBとしてマイナス点だ。

 3バックの中で序列を上げたのは鈴木だが、レギュラーの座を掴むにはもっと経験が必要だ。コアメンバーの冨安健洋、板倉滉、町田浩樹、高井幸大が戻ってきた最終ラインも見てみたい。

 守備陣以外の選手も守りの意識が甘い。2失点目では、鎌田大地のパケタへの守備が緩すぎる。佐野海舟や遠藤航ならもっとガツンと厳しく行っていたはずだ。鎌田は攻撃にリズムを生めるが、ディフェンス力が相変わらず課題だろう。
 
 一方、ポジティブな点は、攻撃の仕掛けの部分が挙げられる。中村の仕掛け、堂安律と久保建英の関係性は十分に通用する。

 1トップは上田が堅いことも証明された。勝負強さ、空中戦の勝率、前線の起点になれる身体の強さなどが突出している。小川航基、町野修斗も、1トップに求められるそれらの条件をクリアできていないように思う。“上田の代わりは誰か?”という課題が改めて出た試合だった。そろそろ「大迫勇也復帰論」が浮上してもいいのではないか。

 MVPは堂安で決まりだ。守備の強度も、攻撃の貢献度も高い。ゴールこそなかったものの、ほぼパーフェクトの出来だった。堂安にとって代表でのベストゲームだったのではないか。

 11月シリーズでは、ボリビア(FIFAランキング77位)、ガーナ(同75位)と対戦。いずれにしてもランキングでは日本より格下だ。W杯本番のシミュレーションとして考えれば、絶対に勝たなければいけない相手に対して、確実に勝点3を奪うか。どんな相手でも勝ち続けることが大事だ。

 今回、メキシコ戦、アメリカ戦、パラグアイ戦と3戦未勝利だった嫌なムードを払拭されたことは良かったが、ブラジル戦勝利に浮かれることなく、しっかりとチームとして”自信”を積み上げてほしい。
 
 なお、本田氏のブラジル戦での採点は以下のとおり。

▼先発
GK1鈴木彩艶6.0
DF4渡辺 剛5.5
DF3谷口彰悟5.5
DF 25鈴木淳之介6.5
MF 21佐野海舟6.5
MF8南野拓実6.5(▼74分)
MF10堂安 律7.0(▼85分)
MF13中村敬斗6.5(▼66分)
MF15鎌田大地6.0(▼85分)
MF20久保建英6.0(▼54分)
FW18上田綺世7.0(▼74分)

▼途中出場
MF14伊東純也7.0(△54分)
FW18町野修斗5.5(△74分)
MF7相馬勇紀5.5 (△74分)
MF17田中 碧5.5(△74分)
MF26望月ヘンリー海輝5.5(△85分)
FW19小川航基5.5(△85分)

監督:森保一6.5

※採点は10点満点で「6」を及第点とし、「0.5」刻みで評価。
 
【著者プロフィール】
本田泰人(ほんだ・やすと)/1969年6月25日生まれ、福岡県出身。帝京高―本田技研―鹿島。日本代表29試合・1得点。J1通算328試合・4得点。現役時代は鹿島のキャプテンを務め、強烈なリーダーシップとハードなプレースタイルで“常勝軍団”の礎を築く。2000年の三冠など多くのタイトル獲得に貢献した。2006年の引退後は、解説者や指導者として幅広く活動中。スポーツ振興団体『FOOT FIELD JAPAN』代表。

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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