美しいモーターサイクルを生み出してきたデザイナーたちが、車両開発という制約から解き放たれた時、どのような表現にたどり着くのか。ドゥカティは、デザイン部門「Ducati Centro Stile(ドゥカティ・チェントロ・スティーレ)」に所属するデザイナーを対象に、「Ducati Artwork Project」を実施した。モーターサイクルデザインで培われた感性を、アートという自由なフィールドへ解き放つ試みである。誕生した作品は、単なるアートワークではない。ドゥカティが長年追求してきた美しさ、スピード、感情、そしてイタリアンデザインの思想を、異なる形式で再解釈した表現。その一つひとつにブランドの本質が息づいている。
デザインとアート、その境界を横断する試み
ボルゴ・パニガーレで生み出されるドゥカティのモーターサイクルは、工業製品であると同時に、しばしば「走る彫刻」と評されてきた。
今回のプロジェクトでは、その造形哲学をさらに押し広げることをテーマに設定。参加した7名のデザイナーは、日々モーターサイクルをデザインする視点を持ちながら、あえてバイクという完成形から距離を置き、新たな表現手法を探求した。
デジタルアート、グラフィック表現、立体作品など、それぞれ異なるアプローチでドゥカティの本質に迫る。作品に共通するのは、ブランドを象徴するフォルムやディテールを再構築し、その奥にあるエモーションを可視化しようとする姿勢だ。



受賞作品『Potentia』

受賞作品に選ばれたのは、Elisa G.による『Potentia』。
新型Panigale V4のフロントデザインから着想を得た本作は、力強さと軽快さという相反する要素を、一つの造形言語として再構成している。
Panigale V4を特徴づけるシャープなラインや緊張感のある面構成は、作品の中で分解され、新たな秩序によって再び組み上げられている。その結果として浮かび上がるのは、モーターサイクルそのものの姿ではなく、ドゥカティが呼び起こす感情やエネルギー。製品を描写するのではなく、本質を抽出した表現と言えるだろう。
Elisa G.はさらに、ドゥカティ史におけるもうひとつのデザインアイコンである916にも着目。時代を超えて支持される2台のモーターサイクルを通して、ドゥカティのデザインヘリテージと現代性のつながりを表現している。