刑務所から前線に送られた兵士がロシアに戻って事件を起こす
前線で壊れた規律は、帰還兵とともに国内へ戻ってくる。
独立系メディアと独紙の共同調査では、ウクライナから戻った兵士が関わる事件で、ロシア国内の死傷者は1000人を超えた。死者551人、重傷者465人である。死亡事件の半数以上は、刑務所から前線へ送られた元受刑者によるものだった。
さらに重いのは、700件を超す判決の約9割で、従軍歴や勲章、負傷歴が刑を軽くする理由に使われていたことである。国のために戦ったという経歴が、殺人や暴力の刑罰を薄めていく。
裁判所まで英雄物語に付き合うのだとすれば、被害者は置き去りになってしまわないのだろうか。
もちろん帰還兵全体を犯罪者と見るべきではない。多くの兵士は、戦場で傷つき、普通の生活に戻ろうとしている。だからこそ、治療や仕事、家族への支援が必要になる。ロシア政府は正確な帰還者数すら明らかにしていない。
独立系メディアは、すでに少なくとも40万人が戻ったと推計している。
ロシアの家庭が危ういのは、帰還兵の数だけが理由ではない。ロシアは2017年、重大な傷に至らない家庭内暴力の初犯を刑事罰の対象から外した。ロシアにはもともと家庭内暴力を軽く扱う制度がある。
そこへ、長い戦闘を経験し、心や体に傷を負った兵士が十分な治療もなく戻ってくる。妻や子どもに危険が及んでから警察が動くようでは遅い。
個人破産は過去最多となった
しかも、家族は声を上げにくい。夫や息子は国が「英雄」と認めた兵士である。暴力を訴えれば、祖国のために戦った人を非難したと受け取られる。裁判でも従軍歴が有利に働く。戦争の宣伝が、家庭の中で被害を受けた人を黙らせるのである。
生活苦も家庭を追い詰める。戦争景気で伸びていた実質賃金と所得は勢いを失い、個人破産は過去最多となった。
働き手は軍や軍需工場に吸い取られ、地方では人手が足りない。物価が上がり、借金が残り、父親が前線へ行く。補償金が家計を支えるほど、家族は戦争から抜けにくくなる。戦争に反対したくても、兵士の給料や戦死時の支払いに生活を頼っているからだ。
その家庭を受け止める社会にも余力がない。
MediazonaとBBCロシア語版が氏名まで確認したロシア側の戦死者は、2026年2月に20万人を超えた。死亡の知らせは少なくとも2万6600の町や村に届き、確認された死者の3分の2は人口10万人未満の地域の出身だった。

