イオンモール熊本(嘉島町)で熊本地震の後、漏えいしたLPガスによる可能性が考えられている爆発が起き7人が死亡した事故。イオンは8月11日、避難後は再入館を認めない運用を前提としていた一方、従業員らからの要望に個別対応し、一時入館を認めていた事実を確認したと発表した。
イオンは建物から避難した後の具体的なマニュアルがなかったことも明らかにし、これが再入館を一部で認める混乱を生んだことも認めた。
「⼀旦避難をした者は館内に⼊らないというのが我々のマニュアル」
熊本地震は7月28日午後4時27分ごろに起きた。イオンの説明では、当時客と従業員が計約4500人いたイオンモール熊本では午後5時頃には客の屋外避難誘導を完了し、入居する専門店の従業員も屋外へと避難した。
その後、安否確認システムを使い、モール事務所から5時12分に専門店店長宛てに、同21分には専門店従業員宛てに、それぞれ「本日の営業中止」と「帰宅」のアナウンスを一斉配信。「館内に戻ってよい」という避難解除のアナウンスは配信していないという。
しかし5時50分ごろに起きた爆発の後、大破した建物の中から2階にあるコスメ・生活雑貨セレクトショップ「ハビタ」の女性従業員2人やオンワードホールディングス(HD)の従業員3人など計7人が遺体で見つかった。
ハビタの2人の女性は休暇中だった店長を通じて会社の幹部から「戻れるのなら売上金を金庫に保管してほしい」と指示されて店内に戻ったことが、この幹部の発言で確認されている。
オンワードHDの3人は、同社の説明では爆発前に「貴重品を取るために店舗に戻ることができた」と外部の社員に連絡していたという。
7月29日の記者会見で、専門店従業員が館内で死亡したことについて問われたイオンの吉⽥昭夫社長は、
「社内ルールとしては、⼀旦避難をした者は館内に⼊らないというのが我々のマニュアルのルールになっております」
と言いながら、いったん避難した後に帰宅のため⾞のキーなどを取りに戻った人がいるとの未確認情報があると説明していた。
ただ吉田社長は「中に入ってよい」との許可やアナウンスはなかったのか、との質問については、「そういったことは⼀切ございません。明確に否定しておきます」と明言。イオン側が許したことはないと強調していた。
取材班にこれまで寄せられたイオン従業員の証言、イオンの見解は…
しかし関係者からは制止されずに自由に再入館できたとの証言が相次いでおり、「集英社オンライン」では地震発生後、これを何度も報じてきた。
2階のアパレル専門店の男性従業員(21)は、客を屋外に避難させスタッフも外で待機していた時に店長から「中の安全の確認は取れた。中に入って荷物をとってきてもいいし、このまま帰宅してもいいよ」と言われ、財布を取るために店に戻ったと証言した。
「財布は従業員の休憩場所に保管してあったのでそこに行くと、ガスの臭いというか、トイレや下水道のような臭いがしていました。財布を取って店外に出て、モールの入り口のバス停のあたりに来た頃に『ドーン』という大音響とともに建物から煙が出ているのが見えました」(男性従業員)
別の店舗の60代の女性従業員も、
「スマホやバッグなどの荷物を置いて出てきた従業員もいて、揺れが収まった後に店に戻ろうとしていましたが、『こういう時は戻るのは危ない』と店長からストップがかかりました。ただ現場はだいぶ混乱しており店舗それぞれの判断が必要で動いているように見えました。私ももし戻っていたら…」と話す。(#1)
また、女性従業員2人への入金作業の指示を出したハビタの幹部は、「私の指示がなければ、こういうことは起こらなかった」と自身の責任を認めながら、イオン側は再入館を許可したのではないかとの疑念を口にしていた。
「爆発翌⽇、店⻑に顔⾒知りのモールの事務所職員が『私、(亡くなった)2⼈を最後に⾒たんだけれども、⼤丈夫だった?』と⼼配して電話をかけてきてくれたんです。
その方が⾔った(亡くなった従業員との最後の)会話というのが、『気をつけて⾏ってらっしゃい』『⾏ってきます』というニュアンスだったといいます。それで、(2⼈は)笑顔で⼊っていっちゃったと」(ハビタ幹部)
こうした証言があることを集英社オンラインがイオンに尋ねると、8月6日夕の段階で「出入口での抑止や周知を含む運用が十分に徹底できなかった可能性があります」と認めていた。(#9)

