次代に残したい「プロレスラー魂」
──酒の席での先輩との付き合いにも、苦労されたのではないでしょうか。
当時は酒豪が多く、しかも「飲め飲め」と後輩に勧めたがる人が多かったんです。その点もかなり苦労しました。私は、当初、ビールを1杯飲んだら顔が真っ赤になってしまうくらい弱かったんです。
あるとき、先輩に飲み会に連れて行ってもらったとき、話の流れで「お前、面白いことやれよ」と言われたんです。私はつまようじを5、6本ほど手に取って、自分の額に突き刺しました。で、1本抜いたんです。するとお酒も回っていましたから、血行がよくて、血がぴゅーっと噴き出したんです。みんな「おもしれえじゃねぇか」なんて認めてくれて(笑)。とっさに考えた一発芸でしたが、何とかなりました。
──天山選手は、先輩からいろいろな“しごき”を受け、同時に現在では、それらは“ハラスメント”として許されない時代でもあります。8月15日をもって引退される今、今後のプロレス界に期待することを教えてください。
確かに、私たちがやってきた、あるいはやらされてきたことの多くは泥臭い根性論で、今の新しい考え方を持つプロレスラーにとって相容れないものかもしれないなとは思っています。また、私たちが受けてきた仕打ちのなかには本当に理不尽なだけのものもあって、それらがずっと続くことがよいとは思っていません。
一方で、プロレスラーという仕事は、単に強ければいい、試合に勝てればいい、という仕事でもありません。リングは、その人の生き様みたいなものが技の応酬を通じて花開く、特殊な空間です。その姿が、わざわざ足を運んでくださっているお客さんに届いて、感動させることができるのだと思います。
プロレスラーが四六時中、豪快であることを求められるのは今も昔も変わらないので、「プロレスラーとしてこうあるべき」という中核の部分は失わずにいてほしいなと思っています。
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取材・文/黒島暁生 撮影/野﨑慧嗣

