ミルコ・デムーロがJRAからアメリカに遠征して3カ月になる。どのようにしているのか、お伝えしよう。
7月19日の遠征初日に初勝利を挙げたが、すっかり向こうの競馬になじんでいるようだ。10月5日にはサンタアニタパーク競馬場で行われたサーファーガールS(GⅢ)を、ブレーブデブに騎乗して優勝。2番手から早め先頭に立って、そのまま押し切ったものだったが、この勝利で10勝目となった。これが重賞初勝利でもある。
同馬は次走、10月31日にデルマー競馬場で行われるBCジュベナイルフィリーズターフ(GⅠ、芝1600メートル)に出走予定。ここには矢作芳人厩舎のスウィッチインラヴも出走予定なので、直接対決が見られそうだ。
ちなみにエージェントのトニー・マトス氏は、かつてラフィット・ピンカイ・ジュニアやゲイリー・スティーブンスといったスター騎手を担当してきた実績を持つ凄腕だ。デムーロ自身、向こうに行ってすぐに最高のエージェントと組めて、本当に良かったと言っている。
デムーロにとってアメリカは、初めての地ではない。17歳の時にイタリアから西海岸に渡って騎乗した経験がある。リチャード・マンデラといった名伯楽の馬にも騎乗して、様々なことを学んだという。今回の遠征は、日本での騎乗が激減して負のスパイラルに陥っていた状況から脱け出すためだったが、思い出の地に行って再起のきっかけにしたい思いもあったようだ。
遠征して2カ月半ほどは親しい騎手やエージェントの家に住んでいたが、今はサンタアニタ競馬場の近くに家を借りて、家族で生活している。調教にも熱心に騎乗して、ほぼ競馬漬けの日々を送っているが、自宅に戻るとインスタグラムに載っている、日本からの便りに必ず目を通す。そこには「日本に帰ってきて」というファンの声が多いようだが、現在はアメリカでの生活が楽しくて、年内一杯は滞在予定だとか。
ただ、GⅠでの騎乗依頼があれば、一時帰国してもいいという。しかし残念ながら、そのチャンスはやってきそうにない。すでにGⅠの有力馬には、短期免許でやってくるクリスチャン・デムーロやダミアン・レーン、そして初来日となるアレクシス・プーシャンの騎乗が予定されているからだ。
実の弟にチャンスが与えられて、自分がないがしろにされている現実には複雑な思いを抱くことだろう。見返してやるためにも、BCジュベナイルフィリーズターフは勝ちたい。
(兜志郎/競馬ライター)

