頭になかった選択肢
上の階の催事は今日までで、次を待つという考えは頭にありませんでした。中は人でいっぱいでしたが、ベビーカーなら少し動かせるだろうと勝手に決めて、私は紙袋を先に入れました。
「少しくらい詰められるでしょ。こっちは急いでるの」
口に出してから、自分の声のきつさに気づきましたが、引き返しませんでした。
鳴っても降りられなかった
「ベビーカーが、これ以上動かせないんです」
正面の女性の足元で、赤ちゃんが毛布の中で眠っていました。頭の上ではブザーが鳴り続けています。最後に乗った自分が降りれば、ブザーは止まる。それは分かっていました。それでも、ここで降りれば周囲に負けたような気がして、私は動きませんでした。誰か1人くらい降りてくれてもいいのにと、そのときは本気で思っていました。
