ひと昔前に比べて「あの人は今」的な番組をあまり見かけなくなった気がする。ヒット曲1曲だけで消えた歌手や、成長してからとんと見なくなった元子役、ケガで活躍の場を失った元スポーツ選手…そんな人たちが現在の姿を紹介する系の番組だ。
インターネットが発達した現在となっては「そういや、○○って最近、見ないけど、どうしたんだろう」と気になったらパソコンかスマホで調べれば情報が出てくるわけで、もはや「『あの人は今』は今」状態と言えるのかも!?
10月16日に放送された「あの金どこ行った?」(フジテレビ系)は、番組公式サイトによると「かつて“大金”を手にした栄光の時代から一転、転落を経験した有名人たちに直撃取材。そのお金はどこに消えたのか?そして今、彼らは転身や復活を遂げているのか?…人生をやり直し、再び歩み出す姿に迫るドキュメントバラエティー」とあるが、ようは「あの人は今」的番組だ。
今も細々とやっている俳優や元アイドル、元芸人の「今」なんかよりも興味を引いたのが、大ヒットした落ち物パズルゲーム「ぷよぷよ」を開発したコンパイルの創業者で、代表取締役社長だった仁井谷正充氏の話だ。
それこそ時間を忘れて「ぷよぷよ」をやっていた(でも結局、連鎖を意識して狙えるほどは上達できなかった)身からすると「今だって儲かってるだろうに、なぜ?」と思ったが、「業務拡大により経営悪化で倒産」し、しかも「ぷよぷよの権利は売却してしまった」という事実に言葉を失った。
現在は家賃5万円のアパートでひとり暮らし。アルバイトと年金で生活しているそうだが、75歳の現在も新たなヒットを目指してゲーム制作をしている姿に「どうかまた、ヒット作が生まれますように」と願わずにはいられなかった。
それに引き換え、イヤ~な気分になったのが泉ピン子だ。もっとも、ピン子を見ていい気分になったことなんて、これまで一度もないわけだが…。
そんなピン子は長年所属した事務所から独立する際に借金の返済を迫られ、結果、3億円の負債が…などという、もう何度も見聞きした話を披露していた。
が、周囲に勧められた自己破産をせず、3年で借金を完済したと鼻を膨らませたかと思うと、「マンションもタワマンから(引っ)越さなかった。『やっぱり苦しいから(引っ)越したのね』なんて、誰が思われたいか」と言う。それどころか「どんなに苦しくても、ブランド品や宝石は手放さなかった」とナレーションが入る。
かと思うと「年金なんて、安いもんよ。どうやって食べていくのよ」と、2カ月分の年金が8万8263円だと実際の通帳を見せて明かすが、今さら庶民派を気取ったところで「そんな高価な指輪を持っていて、よくそんなことが言えるよ」と、猛ツッコミを入れたくなる。
そういえば「サン!シャイン」(フジテレビ系)にコメンテーターとして出演した時も、ピン子の終始ズレた感覚の発言が批判されたが、こういうところが原因なのでは。今も昔もピン子は苦手、と再認識させられた次第。
(堀江南/テレビソムリエ)

