実家の台所で見つけたもの
駅のロータリーには、父の車が一番手前に停まっていました。
「おかえり」
それだけ言って、父は私の荷物を後ろの席に積みました。実家に着くと、台所には出汁のにおいが満ちていて、鍋にはおでんが煮えていました。大根には隠し包丁まで入っています。冷蔵庫に貼られた紙に目が留まりました。
「おでん、駅まで、のどの調子」
そこには、私がこれまで送ってきた言葉が、短く書き写されていました。以前、乾燥でのどを痛めたと送ったことを思い出しました。私の部屋の枕元には、新しい加湿器が置いてあり、空き箱はまだ玄関の隅に畳んで置いてありました。
そして...
帰り際、私は父に言いました。
「メッセージ、わかっただけだと、ちょっと寂しいよ」
父は目を合わせないまま、「そうか。わかった」と答えました。思わず笑ってしまいました。数日後、家に着いたと送った私に、返信が届きました。
「わかった。気をつけて」
一言だけ増えたその返信を、私はずっと覚えています。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
