孤独のなかで、思考は進化する
孤独が脳にもたらすプラス効果は、認知能力の向上と精神的安定という2つの重要なカテゴリーに分けられる。
認知の面では、孤独によってアイデアが広がるのに必要なスペースが確保され、創造性が高まる。私たちがひとりで過ごしているとき、脳は自由にさまよい、さまざまなことについて深く考え、デフォルトモード・ネットワーク(DMN)を活性化することができる。
文章を書く、ピアノを弾く、絵を描く、ガーデニング、祈り、瞑想……、ひとりでいるほうが、こうした活動をうまく行える場合が多い。そのあいだに脳内でDMNが新たなシナプス結合を形成し、私たちのスキルを強化して創造性をより効果的に育むからだ。
孤独によって「自伝的計画」というプロセスが開始され、記憶力や集中力にもすばらしい効果を発揮する。過去の経験を振り返ったり、将来の目標を思い描いたりして、それらを自己意識に統合するのだ。
シベリアに流刑されたドストエフスキーは次のように書いている。
「精神的な孤独のなかで、私はそれまでの人生を残らず振り返り、ありとあらゆる細部について熟考し、過去に思案を巡らせ、みずからを厳しく容赦なく裁き、ときにはこの孤独を与えてくれた運命に感謝さえした……。そしてこれから先は、過去に犯した過ちや失敗をけっして繰り返さないと考え、決意し、心に誓った」
服役を終えると、彼は4篇の傑作を執筆している。
孤独は記憶力の向上や認知能力の成長を促す
また、ミシガン大学による調査では、ひとりで自然の中を歩いた参加者は、グループで歩いたり都市部を歩いた参加者にくらべて、記憶力のテストで好成績をあげたことがわかった。
これは、孤独と静かな環境の相乗効果により、記憶の保持や回想力を大幅に向上させることを示している。
同様に、孤独は脳の神経可塑性(神経系が刺激や経験に応じて柔軟に変化し、新たな機能を獲得する能力)を高め、記憶や集中力に関連する神経接続を強化し、増加させる。
内省の力を利用し、外部からの刺激を減らすことで、脳は過去の考えに集中し、まったく異なる考えを結びつけることもできる。
これによって新たな情報が長期記憶に定着するだけでなく、過去の経験を理解し、そこから教訓を学ぶことにも役立つ。
簡単にいうと、孤独とは単に社会生活から離れるだけでなく、記憶力の向上や認知能力の成長に不可欠な状態なのだ。
文/ジョセフ・ジェベリ 写真/shutterstock

