8月14日午後4時44分ごろ、徳島県鳴門市大麻町市場にあるJR高徳線の「居屋敷踏切」付近で、鉄道車両の撮影に訪れていた19歳の男性に向けて乗用車を急後退させたとして、徳島県警鳴門署は鳴門市に住む建設作業員の男(55)を殺人未遂および暴行の疑いで逮捕した。
現場には当時、被害男性を含め20〜30人ほどの鉄道ファン、いわゆる「撮り鉄」が集まっていた。事件の発端は、車の通行を巡るトラブルだったという。
胸ぐらをつかみ、車で突進する動画を確認
事件が起きた「居屋敷踏切」は、JR高徳線の勝瑞駅と池谷駅の間に位置する。事件当日は20〜30人の鉄道ファンが線路周辺に集まり、列車を待っていたという。社会部記者が説明する。
「男は車で踏切付近を通行しようとした際、撮影者らとトラブルになったとみられています。そのなかで19歳の男性の胸ぐらをつかみ、その後、男性らがいる方向へ後退させた。車は男性には接触せず、ガードレールに衝突して止まりました。男と男性に面識はなかったようです」
車は一部が線路を塞ぐ状態になったが、19歳の男性や列車の乗務員、乗客にけがはなく、当初から警察が「殺人未遂事件」として事態を把握していたわけではなかった。鳴門署の捜査関係者が明かす。
「最初は『踏切で事故が起きた』という交通トラブルに関する110番通報でした。その後、19歳の被害男性が鳴門署を訪れ、詳しい状況を説明したんです。
さらに現場で撮影された動画の提供を受け、男が被害者の胸ぐらをつかむ様子や、車を男性らの方向へ後退させる様子を確認しました。映像や被害者、目撃者への聞き取りを重ねて捜査を進めました」
県警は暴行と殺人未遂の疑いで男を逮捕。一方、男は「胸ぐらはつかんだ」と暴行については認めているものの、車を後退させた行為については「ひき殺そうとしたわけではなく、ビビらせてやろうと思っただけ」と供述し、殺意を否定しているという。
「警察は車の動きや撮影された動画などから殺人未遂容疑を適用しています。本人は殺意を否定しており、撮影者側が道路を塞いでいたのか、最初にどのようなやり取りがあったのかも含めて捜査中です」(前出・社会部記者)
なぜ踏切に多くの撮影者が集まっていたのか
事件の様子を収めた動画はSNSでも急速に拡散された。
「動画では、男がいったん車を降りて撮り鉄らと口論した後、再び乗り込んで前進し、そこから勢いよくバックして1人の男性と接触しそうになります。さらに再び前進した後、複数の撮り鉄らがいる方向へ一気に急バックし、周囲の人たちが慌てて避けている動画は1200万回以上再生された投稿もあります。SNS上では加害者の行為は決して許されるものではないものの、三脚を立て道路を占拠 するなど“撮り鉄”のマナーにも非難の声があがっています」(同前)
では、なぜ事件当日の踏切にこれほど多くの撮影者が集まっていたのか。
JR四国によると、事件発生当時、踏切の手前で停車していたのは「キハ40形」だったという。長年鉄道写真を撮り続けるカメラマンの宮崎慎之輔さんが解説する。
「キハ40形は、車体が重たい上に製造当時に搭載されたエンジンが非力であったことから、JR他社に所属する同形式の殆どが高出力な新型エンジンに載せ替えられたり、JR西日本所属車の場合は塗装こそ国鉄時代の原色の『タラコ色』ですが、エンジン以外にも窓枠などがリニューアルされたりしています。
しかし、JR四国を走るキハ40形は、冷房設備を取り付けた以外は製造当時のエンジンを積み、製造された国鉄時代の状態を塗装以外維持し続けていて、『ほぼ完全な原型』とされているんです(原色のタラコ色に復刻している車両もあります)。
加えて、事件のあった時期は徳島市内で『阿波おどり』(8月12日〜15日)が開催されており、例年この時期にはキハ40・47形が1〜2両から、3〜4両まで増結されて運行されます。旧型車両の増結という『貴重な機会』に、四国外からファンが押し寄せていた可能性が高いです」

