一言だけの返信しかくれない人
大家さんは、同じ敷地の母屋に住む60代の女性です。連絡先は入居のときに交換したメッセージアプリだけで、入居して3年、こちらが何を送っても返ってくるのは「承知しました。」だけでした。冷たいというより、線を引いている感じ。私もその距離感に慣れていました。
以前には、入居者全員に宛てて「ゴミ置き場のルールをお守りください。」という一斉送信が届いたこともあります。自分が疑われている気がして、袋の口を縛り直してから出すようになりました。
その大家さんから届いたのが、「近いうちに、少しお時間をいただけないでしょうか。」という文面でした。挨拶も、お願いの形も、今までに一度もなかったものです。あの注意の続きか、契約の話か、それとも退去のお願いか。読み返すたびに、悪い想像だけが増えていきました。
丁寧さの分だけ募る想像
私は「わかりました。いつでも大丈夫です。」とだけ返しました。すると今度は、「お忙しいところ申し訳ありません。ご都合のよい日で構いませんので。」と、また長い返信が届きます。用件を書かないまま重ねられる敬語が、かえって不穏でした。会社の昼休みに賃貸契約書を読み返し、ゴミ出しの決まりが書かれた紙を財布に入れて持ち歩きました。友人に相談すると「更新の値上げじゃない?」と返ってきて、私は貯金のアプリを開きました。
