スーパーGT・GT300クラスに参戦するスバル/STIの61号車SUBARU BRZ R&D SPORT、その心臓部であるEJ20型エンジンが今季限りで“引退”するというニュースは大きな話題を呼んだ。決断の背景を、STIの小澤正弘総監督に聞いた。
水平対向4気筒のEJ20エンジンは、昭和末期の1988年に初期モデルが登場した歴史あるエンジン。以後はWRC(世界ラリー選手権)を戦うインプレッサに搭載され、数多くの成功を収めたことでも知られる。そしてスーパーGTでも2021年に、EJ20を積むBRZがGT300のシリーズタイトルを手にした。
GT300のBRZに搭載されているEJ20は、高負荷のレース環境に耐えられるよう、WRC時代から続くフルクローズドタイプのシリンダーブロックを踏襲するなど、初期の設計に近い仕様になっている。
ECU(エンジン・コントロール・ユニット)は近年新調されたが、基本的にはWRC時代のエンジンがベース。「ピストンリングなど耐久性に絡むところはちょこちょこ変わってはいますが、大きくは変わっていません。WRC時代のエンジンをドライサンプにしてGTで使えるように改造したものです」と小澤総監督は説明する。
そんなEJ20も近年はトラブルが散見されるようになっていた。今季も第2戦富士でエンジンオイルの潤滑系トラブルにより、トップを快走していたBRZがファイナルラップでまさかのエンジンブロー。第4戦の富士スプリントでは、エンジンの動力を伝えるインプットシャフトにトラブルが出てマシンが止まった。
GT300におけるマシンのパワーが年々高まっていく中、BRZに新たなエンジンを搭載しなければいけないという意識は“随分昔”からあったと小澤総監督は語る。具体的な開発期間については言及を避けたが、来季から投入される新エンジンは数年単位での開発を経て投入されることになるようだ。
「(EJ20を)GTで投入した頃……キャロッセ(CUSCO Racing)から参戦していた頃と比べると、余裕で100馬力以上あがっています。そうなると、やはり耐久性が足りません」
「トラブルが多いという声をいただきますが、やはりかなり無理している部分があります。そういった意味でも、新しいエンジンに変えないといけないという意識は随分昔からありました」
「今後の10年を見据えた時に、今のままでやれるのかと言われたらそうではないのが正直なところですから、新しいエンジンを投入して、しっかり信頼性を確保しながらレースをできるようにしたいというのが今回の狙いです」
「いつから(開発を)始めているかをお話しすることはできませんが、エンジンを開発するには結構年数がかかります。数年間かけてしっかり作り込まないと、レースに投入するようなものにはなりません」
EJ20で望む最後の2レース、第7戦オートポリス、第8戦もてぎに向けて小澤総監督は、ダンロップが得意とする暑いコンディションのレースにはならなそうであるものの、「まだまだ戦闘力があって戦えるエンジンですから、特にコーナリングサーキットのオートポリスではうまくハマればと思っています。なんとか勝ちにいきたいですね」と意気込んだ。
ただ、気になる来季の新エンジンについてSTIは、未だ沈黙を守っている状況。先日もてぎで行なわれたGTエントラント協会のテストでは、61号車とは別に610番のゼッケンをつけた『STI S001』という車両名のBRZが走行していたが、そのテストの内容や目的などについては依然としてコメントを控えている。
とはいえ、610号車のBRZは現行のBRZとはエンジンサウンドが異なっていたのは確かであり、“状況証拠”的には新エンジンのテストである可能性が高いと思われる。現段階では、そのサウンドから次期エンジンを“妄想”するしかない。

