神社の鳥居を背景に、空手世界王者がハイキック――。そんな一枚の写真がSNSで議論を呼んでいる。「神聖な場所で失礼」という声がある一方、「何がダメなの?」との意見も。実際、神社側はどう考えているのだろうか。
鳥居の中でハイキック 空手チャンピオンの写真が物議
話題になったのは、ドイツの女性空手家、ゾフィー・ヴァハター氏(Sophie Wachter)がSNSに投稿した一枚の写真だ。
ヴァハター氏は2014年の空手世界選手権で、女子団体形の世界王者となった実績を持つ。
そんな彼女が日本を訪れた際、福岡県内とみられる神社で撮影した写真をインスタグラムに投稿。
ヴァハター氏は複数の石造りの鳥居が連なる場所で、鳥居のほぼ真下に立ち、片足を鳥居の内側へ高く突き出すようにハイキックをしている。足が鳥居そのものに触れている様子は確認できないものの、構図としては鳥居とキックをかなり意識したものになっている。
さらに投稿には『鳥居の前を、蹴りを繰り出さずには通り過ぎられなかった』という趣旨のコメントも添えられていた。
すると、この写真に対してSNSでは、
〈神聖な場所で蹴りのポーズをするのは失礼では〉
〈あらまぁ、なんて罰当たりですこと〉
〈教会で、十字架のキリスト像にもやるんでしょうかね?〉
〈これって、日本人が欧米の教会にいって、キックためしてみずにはいられなかったとか、木刀で叩いてみずにはいられなかったというのと同じ〉
など、批判の声があがった。
ヴァハター氏はその後、問題となった写真を削除。日本文化を侮辱する意図はなかったとしたうえで、その場では十分に考えが及ばなかったとして謝罪している。
ただ、SNSでは批判だけでなく、今回の行為を問題視する声に対して、疑問を投げかける人もいた。
〈鳥居を蹴っ飛ばした訳じゃないし、そんな目くじら立てんでも〉
〈鳥居とか神社の近くで朝練とかしてる日本人おると思うし、この人は他人に迷惑かけないようにしている。何がダメなの? 言語化できる?〉
〈確かに、決して好ましいポーズには見えないが、例えば、カメラを向いて正拳突きポーズならOKだった? カメラ側に向けてのキックのポーズなら? 結構境界は曖昧かなとも思ったり〉
鳥居で懸垂には「本当に失礼ですよね」
確かに、鳥居そのものに足を当てたり、壊したりしたのであれば分かりやすい。しかし今回は、あくまで鳥居を背景にポーズを取った写真だ。
では、神社で写真を撮るとき、どこからが「失礼」になるのだろうか。
近年、神社の鳥居をめぐっては、外国人観光客の行動がSNSで問題になるケースが相次いでいる。
2024年10月には、北海道室蘭市の中嶋神社を訪れたチリ人姉妹が、鳥居にぶら下がって懸垂をする動画をインスタグラムに投稿。さらに鳥居の前で逆立ちしたり、階段の手すりで逆立ちしながら開脚したりする様子も公開し、批判が殺到した。
姉妹はその後、動画を削除して謝罪。中嶋神社は取材に対し、「あんなことをされるのは、本当に失礼ですよね」と困惑を示していた。
またSNSでは、鳥居を使ってダンスのような動きをする外国人観光客の動画も拡散。「訪れる国の風習には尊敬の念を持ってほしい」といった声があがるなど、神社での撮影マナーをめぐる議論はたびたび起きている。
ただ、鳥居そのものにぶら下がったり、触れながら運動したりする行為と、鳥居には触れず、その場でハイキックのポーズを取る今回のケースは少し事情が違う。
では実際、今回のような行為も「失礼」にあたるのだろうか。舞台となったのは福岡県内の神社とみられる。そこで、県内の多くの神社を取りまとめ、公式サイトでも「襟を正して静粛を守る」「神聖を損なうことはしないように」と参拝マナーを呼びかけている福岡県神社庁に聞いた。
担当者は今回の騒動について「把握しています」としたうえで、神社神道には戒律や規定というものがなく、一律に「これは絶対にダメ」と決めるのは難しいと説明する。
「基本的にはですね、神社神道に戒律とか規定というものがございませんでして。基本、最終的にはそれぞれのお心のお話になってくるんですよね」
そのため、今回のようなハイキックのポーズを一律に禁じる全国共通の規定もなく、明確に「NG」と線引きするものではないという。
「その他の参拝者の方がどう思われるかとか、ご本人がどんなふうに感じられるかとかですね。こちらから『これは絶対にいけません』とか申し上げること自体がそもそも難しいのです」

