
NINTENDO 64本体底面にある「謎の端子」(マグミクス編集部撮影)
【画像】えっ、「64」本体と一体化するの? これが幻となった「64DD」との接続口です
「大容量ディスク」を採用、ビッグタイトルの発売も予告
今から29年前、1996年6月に発売された「NINTENDO64」(以下、64)は、先立って発売された「PlayStation」「セガサターン」を相手に次世代ハードの覇権を争ったゲーム機でした。『どうぶつの森』や『大乱闘スマッシュブラザーズ』といった、現在も愛される人気シリーズが初登場し、アナログスティックを備えた斬新なコントローラーが後世に影響を与えるなど、歴史に刻まれるゲームハードのひとつです
改めて「64」本体を見ると、本体上面のわかりやすいところに大きな拡張端子がついています。この端子については、以前マグミクスの記事《NINTENDO64に堂々とついていた「謎の端子」 使うには「勇気」が必要だった?》で、詳しく取り上げましたが、実は本体の底面にもうひとつ、「謎の端子」が存在していたのです。
この底面の端子は「50PIN拡張コネクタ」と呼ばれ、この端子を実際に使用する周辺機器「64DD」の発売が、1996年当時から予告されていました。
64DDの上に「64」が重なるように接続すると、当時のROMカセットよりも大容量となる64MB(メガバイト)の磁気ディスクを利用でき、そのうち約38MBを書き換えたり、ゲーム内で作成したデータを保存したりできました。このスペックを活かした作品として、
・『ゼルダの伝説 時のオカリナ』が同時発売
・『マザー3』『スーパーマリオ64-2』『ポケットモンスター64』などが発売予定
……といった情報がアナウンスされていました。
ところが、肝心の「64」本体がPlayStationやセガサターンとの競争のなかで、売れ行きを大きく伸ばすことができない状況で、「64DD」自体も発売延期を繰り返し、ようやく1999年に発売されました。

「64DD」の外箱は、「64」本体の外箱と統一感のある配色、デザインとなっていた
「インターネットにつながる」を新たに打ち出したが…?
64DDの発売時には、「書き換え可能な大容量ディスク」に加えて、当時普及が進んでいたインターネットに接続できるという特徴も打ち出しており、「追加ステージやキャラクターなどのダウンロード」「他のユーザーとのデータ共有」など多彩なサービスが利用できるとしていました。
ただ、64DDは機器単体では販売されず、月額制のネットワークサービス「ランドネット」に加入する形で本体やソフトを使用する……という形態になっていました。
2000年のサービス開始から、3Dキャラクターを作成したり、そのキャラを動かしてムービーを作成したりできる 『マリオペイント タレントスタジオ』や、クセ強な巨人を育成するオープンワールド風ゲーム『巨人のドシン』など10本のソフトが提供され、作成したコンテンツを他のユーザーと共有するサービスなども稼働しましたが、開始からたった1年でサービスが全面終了してしまいます。同サービスの加入者は1万5000人程度だったといいます。
64DDでの発売がアナウンスされていたビッグタイトルは、「64」用ROMカセットで発売されるか、他のハードで発売される、あるいは発売中止となるなど、64DDの普及を後押しするには至りませんでした。
64DD発売当時の任天堂の報道資料によると、デジタル、ネットワーク、コミュニケーションが発展する世界情勢を背景に、ゲーム領域においても「単にゲームで遊ぶということから、音楽、映像を付加して自分だけのゲームを作ったり、ゲーム以外のデータを他人と交換したりするなど、今までにない遊び方を提供できるようになります」としています。
このように描かれた未来像は、その後インターネットの普及が進んだことで現実のものとなり、「Nintendo Switch」そして「Switch2」が発売された現在では誰もが当たり前のように楽しんでいます。「64」本体の底にある謎の端子には、時代の先を行きすぎた「夢」が詰まっていたと言えるでしょう。
