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なぜ法務省は『ラヴ上等』と組んだのか…「更生」をエンタメに託す危うさと、必要だった線引き

なぜ法務省は『ラヴ上等』と組んだのか…「更生」をエンタメに託す危うさと、必要だった線引き

Netflixの恋愛リアリティシリーズ『ラヴ上等』シーズン2と「更生保護」をPRするタイアップを行っていた法務省が8月21日、今後のタイアップを取りやめると発表した。
出演者が番組内で自身の過去について「人に火をつけた」と語ったことなどをきっかけに番組やタイアップへの批判が広がっていた。ここで注意したいのは、番組内の発言を超えて実際の事件内容や刑事処分まで断定することではない。問題の中心は、そうした発言を含む作品と、なぜ法務省が「更生保護」の名のもとで組んだのかという点にある。

教科書的な啓発ポスターより高い訴求力の代償

そもそも法務省は何を期待していたのか。

8月5日の発表を見ると、その狙いはかなり明確だ。

法務省は『ラヴ上等』について、参加者が「過酷な生い立ちや過去の罪など生きづらさ」を抱えながら、自分と向き合い、他者との関係の中で成長していく作品だと評価。

それが更生保護の掲げる「人は変われる。一緒なら」というメッセージに通じるとしてタイアップを決めた。そして番組をきっかけに、広く更生保護の取組を知ってもらいたいとしていた。

さらに法務省は取材に対し、作品完成後にNetflix側からタイアップの提案を受け、完成作品を事前に確認したうえで決定したと説明している。つまり、少なくとも法務省は問題となった発言を含む完成作品を確認できる状態でタイアップを決めていたことになる。

むしろ問われるべきは、作品を確認したうえで、公的機関の「更生保護」の広報として適切だと判断した基準だろう。

考えられる狙い自体は理解できる。

「更生保護」という言葉だけを掲げても、多くの人には仕事内容が伝わりにくい。そこで人気配信サービスのリアリティショーを入り口にし、過去に問題を抱えた人も人との出会いや居場所によって変わることができる――そんな物語を通じて、更生を身近なテーマとして届けようとしたのだろう。

広報としては、教科書的な啓発ポスターより訴求力ははるかに強い。しかし、その「強さ」こそが落とし穴だった。

犯罪や非行を経験した人の人生を描くこと自体を否定する必要はない。

むしろ社会復帰において、就労、住居、人間関係、地域とのつながりが重要であることは、国内外の再犯防止研究でも繰り返し指摘されている。法務省の再犯防止政策も、就労・住居の確保や地域による包摂などを重要施策に位置づけている。

米国立司法研究所(NIJ)の研究資料でも、家族や地域社会の支え、雇用、本人の変化への動機などが、犯罪から離脱していく過程に関係すると指摘されている。

だから「不良だった人間を表舞台に出すな」という結論では、むしろ更生保護の理念と逆方向に進みかねない。

問題は別のところにある。

「更生の物語」と「更生保護の広報」は同じではない

エンターテインメントでは、強烈な過去や過激な言動は「キャラクター」になる。視聴者を驚かせる過去ほど映像として強く、予告編やSNSでも拡散されやすい。

だが法務省がタイアップした瞬間、その同じ表現には別の意味が加わる。

作品それ自体の評価と、行政がその作品を政策広報に採用することは分けて考える必要がある。国がタイアップに参加すれば、作品の内容とは別に、「この作品は更生保護という政策理念を伝えるのにふさわしい」という行政上の評価まで付加されるからだ。

しかも、更生とは過去の加害行為を魅力的なプロフィールに変換することではない。

自分がしたことの責任を引き受け、それでも社会から永久に排除されることなく生活を立て直していく。その二つを同時に成立させる営みのはずだ。

法務省自身もタイアップ中止の声明で、更生保護は過去の行為を肯定したり責任を曖昧にしたりするものではないと改めて説明している。犯罪被害者の尊厳や心情への配慮と、犯罪をした人の社会復帰支援は「いずれも」欠かせないとしている。

この説明は正しい。

だからこそ、「それならなぜ、その観点をタイアップ決定時に十分働かせられなかったのか」という疑問が残る。

似たような構図はYouTubeの人気コンテンツ『BreakingDown』にも見える。

BreakingDownは2024年、複数の過去出場選手が逮捕されたことを受けた公式声明の中で、根底には「過去に失敗したり、躓いたり、過ちを犯した人に再挑戦の機会を提供したい」という考えがあると説明した。

一方で、逮捕された過去出場選手を無期限の大会出場停止とし、「暴力や犯罪行為を一切容認せず」とも表明している。2023年にも出場選手の逮捕を受け、無期限出場停止の措置を取っている。

ここには、更生や再挑戦を扱うコンテンツが避けて通れない課題がある。

過去を問わないからこそセカンドチャンスになる。しかし、現在の行動まで問わなくなれば、それはセカンドチャンスではなく事実上の免責に近づく。

さらに、過激な人物ほど注目を集めるというエンタメの構造が加わると、「更生した人」が評価されるのか、「より壮絶な過去を持つ人」が評価されるのかという境界も曖昧になる。

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