
手のひらに湿疹、危険サインも「僕個人の事情は関係ない」。J3残留にすべての力を注ぐ【ザスパ社長・細貝萌の生き様】
9月21日と10月9日に細貝萌社長が声明を発表し、今季はJ3残留に全精力を注ぐことになった18位のザスパ群馬。同じ下位グループを見ると、最下位のアスルクラロ沼津は、中山雅史前監督の後を引き継いだ鈴木秀人監督の立て直し策が奏功。状態が上向きつつある。19位のカマタマーレ讃岐や17位のAC長野パルセイロは勝ったり負けたりではあるが、何としても生き残ろうともがき続けている。
もっとも、群馬としては他チームの動向よりも自チームにフォーカスすることが先決だ。直近8戦未勝利(1分け7敗)の戦いを改めて見返すと、得点はそれなりに取ってはいるものの、それ以上に失点数が多い。そこを細貝社長も特に懸念しているという。
「今季のザスパはゴール前30メートルエリア内の進入回数の多さ、ボール保持率の高さ、クロスからの得点数などリーグ上位に位置している要素がいくつかあります。その反面、クロスからの失点も多いので勝てていない。それは紛れもない事実です。
何度も話をしている通り、僕らは今年から沖田優監督体制で攻撃的なサッカーを目ざしています。だけど、そのなかでもう少しうまく対応していかないと結果を出すのは難しい。今は選手のメンタル的な部分、コンディションをしっかり上げることが大事。それができれば、やりたいサッカーが身体と頭に浸透していって、結果にも結びつくはずなんです。
僕は1年前までプレーヤーだったからこそ、その重要性を痛感します。つい最近、香川真司から電話がありましたけど、精神的な強さがサッカー選手にとって一番だなと痛感させられます。ともに日本代表で戦った同世代の(本田)圭佑、岡ちゃん(岡崎慎司)を見ても、みんなメンタルはものすごく強かった。そこを引き上げることも、J3残留の重要ポイントだと考えています」
細貝社長はこう強調。とにかく今は選手たちが心身両面で良い状態を保ち、持てる力の100%を出してくれることを強く願っている。
実際、選手時代の細貝社長も局面でのバトル、球際の強さ、タフさと粘り強さ、強靭なメンタリティで様々な難局を乗り切ってきた。
「僕はもともと技術もなければ、サイズもないし、スピードもない選手でした。そういう人間がドイツ・ブンデスリーガ1部でプレーするチャンスを得て、ここまで長く選手をやることができたのは、“そもそものベースの部分”があったからだと思っているんです。
自分はサッカーのためにあらゆる時間を注ぎ込み、最高の準備を続けてきました。『球際で熱く行こう』とか『情熱を持っていないと勝てない』という思いを前面に押し出すとか、そういうことは常に心がけてきたつもりです。
サッカーはいくら戦術が良くて、やっているスタイルが素晴らしくて、チームの目ざすところがハッキリしていても、球際で勝てなかったり、走り負けたりしていたら、勝てるもんじゃない。ベースのところを引き上げないと、うまくいかないのは間違いない。そこはより選手たちに伝えなきゃいけない。僕なりのやり方で伝えたいと考えているところです」と、細貝社長は語気を強める。
とはいえ、社長業が全体の7~8割を占め、毎日トレーニングに帯同しているわけではないし、試合前日や当日のミーティングに参加しているわけではない。GMも兼務している分、より近くで現場に携わりたい思いも強いのだろうが、沖田監督や佐藤正美強化部長たちを信じて、できる限りのサポートに徹するしかないのが現実。そこはもどかしい部分があるはずだ。
細貝社長が直視しなければならないのは、チームのことだけではない。ベイシアグループ入りしたクラブ経営の今後、サポーターや地域との関係構築など、考えなければいけないことは山ほどある。大きなやりがいを感じていると同時に、ある意味、ストレスフルな状態なのかもしれない。
実際、10月に入ってから彼は手のひらに湿疹ができるなど、危険サインも出始めているという。2018年12月に膵のう胞性腫瘍という原因不明の病気にかかり、手術を余儀なくされた経験もあるだけに、身体のケアには人一倍気を使わなければいけないと自覚を強めている。
「身体に気をつけないといけないなと思うことは最近、けっこうありますよね(苦笑)。どの職業でも立場が変わったり、環境が変わったりすると、違和感を覚えたり、体調不良に陥ることは少なくないですよね。僕は身体にすごく敏感な方。手の湿疹はストレスのバロメーターで、警戒を強めています。ただ、僕個人の事情は世間の人には関係のないこと。この先もJ3残留に向かって努力を怠らずにやっていきますし、欲を持って前進していきたいと考えています」
睡眠時間を削りながら、クラブのためにすべての力を注ぎこんでいる細貝社長。ラスト8試合という段階で目標設定を変更せざるを得なくなったのは不本意ではあったが、そうした以上は結果を出すしかない。彼はクラブトップとして、共に働く仲間たちが仕事に邁進できるように仕向けていくという。
「1年後とか2年後、数か月後でもいいんですけど、『あの時はこんなことがあったけど、頑張って乗り切ったよね』と思えるようにしたい。そしてまた、次のトライができる環境をしっかり作れるように頑張ります」
彼らの努力と苦労がJ3残留という形で結実することが最良のシナリオ。11月29日の最終節・高知戦まで予断を許さない日々が続いていきそうだが、細貝社長ならば必ず壁を乗り越えてくれるはずだ。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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