今年1月から9月にかけての病院の倒産件数が過去最悪ペースであると、東京商工リサーチが発表している。それによると、2025年1月から9月の病院、クリニックの倒産は27件に達し、このままのペースでいけば、リーマンショック後の2009年の42件以来、最悪の結果になるという。
ここで「病院経営をめぐる誤解」について説明したい。オールドメディアが病院の赤字経営を大騒ぎしているが、医療法人は「赤字経営」が当たり前。赤字でなければ国の地域医療税制優遇制度を受けられず、国や自治体からの助成金、補助金をもらえなくなってしまう。
だから病院経営者は自分のみならず、配偶者や親族を医療法人の役員に仕立て上げ、数千万円の役員報酬を受け取るほか、投資目的で購入した不動産は必要経費扱い。8月30日付の本サイト記事で取り上げたように、院長個人の趣味で収集したフェラーリやポルシェなどの高級外車も「病院の備品」扱い。あまりにふざけた税制優遇と公的支援を受けているのだ。
かくして病院は従業員に「赤字経営」、国民には「清貧」とうそぶいて給料やボーナスを出し渋り、納税者から高い税金と健康保険料を巻き上げてきた。
今年2月には首都圏などでクリニックや老人病院、介護施設を多角経営してきた北海道名張市の医療法人福慈会と関連法人が破産。2法人の負債総額は97億円にのぼるが、破産の原因は事業拡大による乱脈経営であり、医師会の言う「診療報酬(医療の値段)が安いから」ではない。
そこで思い出すのが、2021年8月の東京都医師会「大暴言」だ。
2020年4月に安倍晋三首相(当時)が緊急事態宣言を出してから4年間にわたり、繁華街から人と光が消えた。飲食業界、サービス業界の窮状に対し、日本医師会、東京都医師会に所属する町田市医師会副会長の佐々木崇氏(佐々木整形外科医院院長)は、東京都医師会のサイト上で「理容師に特段、新型コロナへの配慮など感じられない。理容師なんて素人でもできる」「不要不急の商いは次々と潰れていく」と発言した。
他業種へのリスペクトを欠く傲慢発言である上に、佐々木氏ら整形外科医は新型コロナと闘ってもいない。新型コロナが2023年5月に感染症5類になるまで、全国の整形外科病院でコロナ陽性患者が出ると地元の保健所に電話を入れ、「早いところ別の病院に移せ」と要請。救急車が揺れるだけでも痛みに悲鳴を上げる骨折患者を自分が経営する病院から追い出し、「他の医療機関は遠いので診てほしい」と訴える高齢患者や障害者の診察も拒否してきた。
日常が戻ったのち、ケガをした患者、熱を出した老人にひどい仕打ちをしてきた病院や診療所には患者が寄りつかなくなり、潰れるのは当然だろう。「不要不急のあくどい商売」をしてきた結果だ。
茨城県の医療機関ではすでに、開業医と大病院を映像でつなぐ医療DXが導入されているほか、東大病院では地方病院の手術中に、デジタル病理画像を共有。東大病院内にいる病理医が、地方で肺ガンや脳腫瘍のガン細胞の悪性度を診断する遠隔術中迅速病理診断が実用化されている。
地方に暮らす患者でも、都会と同水準の診察を受けられる未来に手が届くまであと少し。それでも「不要不急の商売」の既得権益を守る必要あるのだろうか。
(那須優子/医療ジャーナリスト)

