視聴者と出演者の構図が逆転
第1シーズン序盤の乃木たちは、基本的に「追われる側」だった。
捕まるかもしれない。逃げ切れないかもしれない。誰が味方なのかも分からない。そもそも主人公の乃木とは何者なのか。視聴者は毎週、振り回され続けていた。
一方、第2シーズンでは主人公の乃木が「追う側」に回っている。さらに凄腕のハッカーやAIという強い味方もいる。どうしても、危機感やハラハラ感は薄くなる。
さらに、ここまで大きく引っ張った謎のひとつが「野崎は本当に裏切ったのか」だったことも、視聴者がドキドキしにくかった理由のひとつだ。
第1シーズンを見てきた視聴者からすれば、野崎が本当に裏切るとはなかなか思えない。阿部寛が演じる野崎というキャラクターへの信頼まで含めた“メタ推理”をすれば、なおさらだ。
作中の乃木は野崎を疑い、必死に追いかけている。ところが視聴者は「いや、野崎が裏切るわけないやろ」と比較的安心して見ている。
このズレは少し痛い。
案の定、第15話で野崎が裏切っていなかったことが明らかになると、ネット上では、
「テンポが悪いというか予想通りの展開過ぎてなんというか」
「うん、野崎の潜入捜査は知ってたよ、みんな」
「野崎さんは裏切ってないって視聴者みんな知っていたのに乃木さんと来たら別班のくせにそんなことも知らなかったの?」
といった冷めた声も上がった。
ここまで来ると、むしろこの先「実は本当に野崎が裏切っていた」くらいの展開があってほしいと思ってしまうほどだ。
第1シーズンは逆だった。
視聴者が「この人は何者なんだ?」と疑っている間に、登場人物たちはこちらをあざ笑うように次々と素顔を明かしていった。乃木にも、黒須にも、ベキにも、ノコルにも、それぞれ隠された顔があった。
登場人物のほうが視聴者より一枚も二枚も上手だった。ところが今は、視聴者のほうが先を読めているように見える。
では、第2シーズンはこのまま勢いを取り戻せないのか。むしろ、だからこそまだ期待できる部分もある。
第2シーズンは、第1シーズンで人気を集めた要素の多くを、まだ十分には見せていない。言い換えれば、まだ“隠し玉”を残したまま、15%台という高い数字をキープしているとも考えられる。
乃木と野崎が再び同じ場所でぶつかる。
豪華キャストが一堂に集まる。
パソコンの前を離れ、人間が実際に動く。
そして「地上波ドラマでここまでやるのか」と思わせる大きな場面が登場する。
そうした回がひとつあれば、視聴率が再び大きく跳ねても不思議ではない。
第2シーズンで初回18.8%を超える日は来るのか。まだ使われていない『VIVANT』らしい魅力が、いつ爆発するのか。その瞬間を期待したい。
文/ライター神山

