近年すっかり「高級魚」と化していたサンマが、今年の水揚げは豊漁とのことで、「庶民の味方」に戻ってきてくれました。スーパーの魚売り場を覗けば1尾100円台のサンマも珍しくありません。
サンマと言えばやはり、塩焼きに白米が一番でしょう。私も自宅でよく食べます。意外にシンプルな料理こそ難しいものです。ここで「弘兼流サンマの焼き方」を教えましょう。
サンマに塩を多めに振って、バットにしばらく置きます。こうすると魚の余分な水分が出て臭みが取れるうえに、焼いた時に身がふっくらと仕上がります。特にヒレと尻尾のところに多く塩を振ると形が崩れにくくなります。
ちなみに塩は、人差し指・中指・親指の3本でつまみ、少し高いところから振るのが基本。これは塩が1カ所に固まらず、まんべんなくかかるようにするためです。決して格好をつけているわけではありません(笑)。プロの料理人は「高塩」と呼ぶそうです。
次に魚焼きグリルで焼きます。身をひっくり返すと崩れるので焼き上がるまで待ちます。これで表面はパリッと香ばしく、中はしっとりしたサンマの塩焼きの完成です。
仕上げはおろし大根を添えてください。おろし大根はギュッと絞って水分を抜いてサンマの横に添えること。
サンマは、はらわたの苦みもまた醍醐味です。学生時代、バイト先で、はらわたを食べないと怒るオヤジがいました(笑)。当時は「苦い!」と思い仕方なく食べていましたが、今では好物のひとつですから、不思議なものです。
日本人は本当に「はらわた」が好きですよね。カツオやマグロの内臓を塩漬け・発酵させた「酒盗」、アユの内臓を使った「うるか」、そして定番「イカの塩辛」、サンマのはらわたも酒のつまみには最高の一品です。
あと、サンマ料理でオススメは「サンマの梅煮」。作り方もそれほど難しくありません。頭と尾を切り落としたら内臓を取り出し、筒切り(骨ごと円筒形に輪切りにする切り方)にして4等分にします。圧力鍋に入れ、醬油、酒、砂糖、出汁醬油、みりん、生姜、そして梅干し2~3個を種ごと加えれば準備完了。
20分ほど加熱すれば完成です。簡単でおいしいだけでなく、骨ごと食べられるので栄養も満点。高級化してからは、なかなか作れませんでしたが、今年はまた挑戦できるかもしれません。
サンマ料理は自宅や仕事場で食べることが多いのですが、忘れられない衝撃の一皿があります。
イタリア料理店「ミアボッカ エミオ石神井公園店」で食べた、サンマが丸ごと1匹乗ったスパゲティです。初めて食べた時、香ばしいサンマがパスタの上に鎮座している姿に息をのみました。
頭から骨まで食べられるのも驚きで、まさに和食とイタリアンが融合した初めてのサンマ体験でした。毎年少しずつリニューアルしているようですが、今年も「だし香る北海道産さんまを丸ごと一本使った贅沢スパゲティ すだち添え」の名前でメニューに登場しています。今シーズンはまだトライしていませんが、ぜひ食べたいと思っています。
弘兼憲史(ひろかね・けんし)1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部卒。松下電器産業(現パナソニック)に勤務後、74年漫画家デビュー。以来『課長 島耕作』『黄昏流星群』などヒット作を次々生み出している。07年には紫綬褒章を受章。

