何度目かの「もう別れよう」
その日、俺は「ごめん、週末の約束、仕事になりそう」と送りました。付き合って1年になる彼女から返ってきたのは、「もう別れよう」でした。喧嘩のあとや、返信が少し遅れたとき、彼女はこの言葉を合図のように送ってきます。
俺はそのたびに謝り、長い引き止めの文面を打ち、彼女の機嫌が直るまで通話を続けてきました。でも今回は、通知を開くのをやめました。いつもの謝罪を頭の中で組み立てはじめている自分に気付いて、急に疲れてしまったからです。通知を残したまま、帰り道の信号をいくつもぼんやり見送りました。
引き止めない返事
翌日、そのままにしていたメッセージを開いてから、俺は短い返事を1つだけ送りました。
「別れたくない。ただ、その一言が届くたびに、どう繋ぎ止めるかばかり考えるようになってた」
飾りのない、それだけの文面です。送信してすぐ、画面が彼女からの着信に変わりました。出ると、聞こえてきたのは、いつもの強気な文字からは想像できない、細い声でした。
「本気で言ったことは、一度もないの」
それなら、と俺は聞きました。「じゃあ、どうして送るの」返事はなく、長い間だけが続きました。
