「ラーメンは体に悪い」という常識は、本当に正しいのか。スープ、麺、肉、卵、野菜など、一杯に多様な食材が入るラーメン。栄養の偏りがちな現代人にとって、その意外な実力を栄養学の視点から見直す。
『ラーメンと健康 「炭水化物=悪」ではない』より一部抜粋・再構成してお届けする。
実は、ラーメンは「完全栄養食」に近い存在
「ラーメンが一次予防になる」と言われても、にわかには信じがたいかもしれません。「ジャンクフードの代名詞だろう」と思われる方もいるでしょう。
しかし、ラーメンという一杯を栄養学的に、そして食材の多様性という観点から見つめ直すと、その驚くべき実力が見えてきます。ポイントは、使われている「食材の数」にあります。
ところで、あなたは普段の食事で、一食あたり何種類の食材を摂っていますか?たとえば、健康的なイメージのあるそば。ざるそばなら、そば(小麦・そば粉)、めんつゆ(醬油・出汁・糖類)、海苔、ネギ、わさびくらいでしょうか。天ぷらをつけたとしても、衣と油、エビや野菜数種で、合計10種類に届けばいい方でしょう。
丼ものの定番である牛丼も同様です。牛肉、玉ねぎ、米、生姜、調味料。食材の数としては決して多くありません。これらは単品料理の域を出ないのです。では、ラーメンはどうでしょう。
まずスープです。こだわりの店であれば、スープを作るために豚骨(ゲンコツ、背ガラなど部位もさまざま)、鶏ガラ(丸鶏、モミジなど)、煮干し、かつお節、さば節、昆布、椎茸、アサリ、さらには玉ねぎ、長ネギ、人参、にんにく、生姜などの香味野菜まで、実に10〜15種類以上の食材を長時間煮込んでいます。
食材の形はなくなっても、そこから抽出されたアミノ酸、ビタミン、ミネラル、コラーゲン、脂質などの栄養素は、スープの中にたっぷり溶け込んでいるのです。その濃厚なスープに、小麦から作られた麺が入ります。
さらにトッピングです。豚肉を煮込んだチャーシュー、栄養の塊である味玉(味付け玉子)、食物繊維が豊富なメンマやキクラゲ、ビタミン・ミネラルを含むネギやほうれん草、海苔など。少しトッピングを追加するだけで、一杯の丼の中で20種類以上の食材とそのエキスを摂取することも難しくありません。
多くの食材を摂ることは、偏りを防ぎ健康を保つ基本ですが、その点でラーメンは非常に優れた複合料理なのです。ラーメンとその他の主要一品料理栄養素を比較すると、その差は歴然としています。
なぜ「ざるそば」や「素うどん」ではダメなのか?
高齢の方や健康を気にする方、多忙で食事の時間をしっかり摂れない方の中に、「昼食はあっさりと済ませたいから」と、ざるそばや素うどん、あるいはおにぎりだけで済ませる人がいます。一見、油も使わずヘルシーで、胃腸に優しい食事のように思えるでしょう。
ところが、医学・栄養学的な視点で見ると、こうした食事は「炭水化物のみ」に極端に偏ったリスクの高い選択になりがちです。結果として、日本の現代人に不足しているたんぱく質や脂質が全く摂れず、かえって栄養バランスの崩壊を助長していると言わざるを得ません。
もちろん、そば自体は植物性たんぱく質や、血管を強くするルチンなどを含む優れた食材です。うどんもまた、消化のよい良質なエネルギー源です。
問題は、それらを「具なし」の単体で摂取してしまうことにあります。筋肉の材料となる動物性たんぱく質も、細胞膜やホルモンを作る脂質も、代謝を助けるビタミン・ミネラルも、麺とつゆだけではどうしても不足してしまいます。
こうしたあっさりとした炭水化物主体の食事を毎日続ければ、体は材料不足に陥り、筋肉はやせ細り、血管はもろくなっていく一方です。これこそが、私が警鐘を鳴らし続けている現代型の栄養不足の正体なのです。
では、ラーメンは他の麺類と何が決定的に違うのでしょうか。一言で言えば、ラーメンは最初から「動物性たんぱく質と脂質がセットになった複合食」だという点です。もちろん具のない素ラーメンもありますが、通常、ラーメンには、チャーシューや味玉、メンマ、ネギといった具材が標準装備されています。
さらにスープには、動物性の脂質やエキスが凝縮されています。この具材と動物性スープの存在こそが、圧倒的な利点となります。
まず、スープの脂やチャーシューの脂身についてです。これらを「太る原因」として避ける人も多いですが、実はこの脂質こそが、食べた後の満足感(腹持ち)を持続させ、余計な間食を防ぐ鍵となります。
さらに重要なのは、脂質には脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)の吸収を高める働きがあります。たとえば、トッピングのほうれん草やネギに含まれるβ‐カロテン(ビタミンA)などは、スープの脂と一緒に摂ることで初めて効率よく体内に取り込まれます。油分の少ないそばやうどんのつゆでは、こうはいきません。

