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慶應生&東大生研究チームが徹底分析!テニスの競技成績を飛躍的に向上させるヒント【ブレークスルーの鍵:第7回】<SMASH>

慶應生&東大生研究チームが徹底分析!テニスの競技成績を飛躍的に向上させるヒント【ブレークスルーの鍵:第7回】<SMASH>

どうすればテニスで一段上のステージへ行けるのだろうか?日々練習に打ち込み、試合にも出場している方であれば、誰でも一度は思うことでしょう。

 この謎に迫るべく、飛躍的に競技成績が向上する現象を「ブレークスルー」と名付け、過去にブレークスルーの経験があり、全国大会で上位進出経験のある8名の選手にインタビューを行ない、その内容を徹底分析しました。

 その結果、多くの選手が共通してブレークスルーのために重要だと感じている事柄が浮かび上がってきました。まず欠かせないのは、練習の質を高め、競技力を継続的に高めていくことです。そして、成長につながる負荷のかかった練習に日々取り組むためには、高いモチベーションを保ち続けることが求められます。さらに、たとえ競技力が向上しても、「練習ではできるのに、試合では上手くいかない」という現象が起こるように、身につけた実力を試合で発揮できるようになることも大切です。

 第7回は、競技力を継続的に高めていくために重要となる「自分の強み・弱みを明確に認識すること」について解説していきます。

■練習の質を高める「課題」への意識

「課題を意識して練習しよう!」——これは、部活動やクラブチームの練習でよく耳にする言葉のひとつです。

前回、「明確な目的があること」が質の高い練習の原則の1つであることを説明しました。ただ気持ちよくボールを打つだけでなく、「より良い当たりで打つために、腰の回転を意識する」といった、具体的な「課題」を持って練習することが大切であるのは容易に想像がつきます。

 こうした「課題」には、大きく2つのタイプがあるのではないかと考えています。すぐに思いつくのは、「自分の弱みを改善するタイプ」の課題です。しかし、もう1つ忘れてはならないのは「自分の強みをさらに伸ばすタイプ」の課題です。

■「課題」とは「弱点の克服」だけを指すわけではない

「あなたの課題は何ですか?」と問われると、無意識のうちに「あなたの弱点は何ですか?」と問われているように感じるのではないでしょうか。

 スポーツ心理学の研究では、自分の「強み」と「弱み」の両方があったとき、北米文化圏の選手は「強み」に注意を向けやすく、日本が属する東アジア文化圏の選手は「弱み」に注意を向けやすい傾向があることが示されています。この背景には、謙遜を重んじる価値観や、弱点を直すことを重視した教育的風土といった文化的な要因があると考えられます。もちろん、同じ文化圏のなかでも個人差があるうえに、「弱み」に注意を向けやすいことは決して悪いことばかりではなく、それが「向上心」や「自己改善」へとつながる場合も少なくありません。

 しかし、「課題」という言葉を「目標達成に向けて取り組むべきこと」として捉えるのであれば、それは決して「弱点の克服」のみを指すわけではなく、「強みをより伸ばすこと」も含まれます。ある選手はインタビューで、「自分の武器をさらに磨き上げるのは、ブレークスルーする上で重要だと思う。自分の場合、弱点のフォアにどうしても目を向けたくなる。自主練習をするにしても、フォアの練習ばかりやりたくなる。でも、結局試合で勝負を決めるのはバックとサーブ。だからこそ、そこにも目を向けて、時間をかけていくことも大切だと思う」と話しています。このように、自分の「弱み」だけでなく、「強み」にも意識的に目を向け、磨きをかけていくことが大切になります。
 ■強み・弱みを「正確に」認識することの難しさ

 加えて、「認識」には誤りが付きものであるように、自分では強み・弱みだと思っていることが、他者は異なって見えることは少なくありません。ある選手は「自分ではフォアハンドを苦手だと思っていたが、スライスや高いボールを使うのを案外相手は嫌がっていると聞いて驚いた。主観的に見た強みと、客観的に見た強みは全然違うことがある」と語っています。先ほど述べたように、課題を意識して練習することは大切ですが、その課題設定自体が誤っていると、せっかくの練習が試合での成果につながらない可能性があります。

■優れたコーチは選手の「強み」を発見する

 それでは、具体的にどのようにして自分の強み・弱みを見つけていけば良いのでしょうか?まず大切になるのは、コーチをはじめとする他者の視点を頼ることです。ある選手も「自分の強みと弱みについて自分自身で考えるだけでなく、コーチや対戦相手、チームメイトに聞いてみることは大切だと思う」と語っています。

筆者はスポーツのコーチングに関する研究も行っていますが、優れたコーチが持つ、選手の「強み」を見抜く観察眼にいつも驚かされます。選手の「弱み」は本人も自覚しやすく、他者からも目に見えやすい一方で、「強み」については、とりわけ競技レベルが低い時期ほど表面化しにくく、気づきにくいものです。

こうしたなか、優れたコーチは選手のプレーだけでなく、性格面-たとえば、積極性が高いのか、堅実にいくタイプなのかといった特性-までを考慮しながら、目に見えにくい選手の「よさ」を発掘します。こうしたコーチのもとで練習できるのは、恵まれた環境だと言えるかもしれません。しかし、他者を頼り、自分以外の視点から強み・弱みへの理解を深めていくことは、共通して重要な実践となります。
 ■試合から自分を知るツールとしてのスタッツ

「練習ではできるのに、試合では上手くいかない」——そんな経験は誰にでもあるでしょう。このように、試合は良くも悪くも「ありのままの自分」が表れる場です。すなわち、試合は自分の強み・弱みを正しく理解するための貴重な機会だといえます。

 試合を通して自己理解を深めるためには、試合後の客観的な振り返りが欠かせません。しかし、テニスは競技特性上、すべての試合をコーチが観戦することが難しく、選手自身で質の高い振り返りを行うことが求められます。

 そこで有効な方法のひとつが、選手たちも実践している「スタッツ」(試合記録)の作成です。試合の映像を撮影し、ミスの種類や本数などを記録することで、自分では気づかなかった傾向が見えてくることがあります。

 たとえば、自分ではバックハンドのミスが多かったと思ってスタッツを見ると、実はフォアハンドの方が多くミスをしていたといったことは珍しくありません。このような客観的なデータを使った振り返りによって、強み・弱みを正しく認識することが、ブレークスルーにつながる質の高い練習の実現にもつながっていきます。


【やってみよう!今日からできる実践へのヒント】
以下のポイントを意識して、「自分の強み・弱みを明確に認識すること」を実践してみましょう!

1) コーチ、チームメイト、対戦相手などに対して、自分の強み・弱みについて意見を求めてみる

2)試合の映像を見てスタッツを作成するなど、客観的な視点を持って試合を振り返る

解説=日置和暉
2000年生まれ。慶應義塾体育会庭球部を経て、慶應義塾大学大学院に進学。慶應義塾大学総合政策学部非常勤講師。プリンス契約コーチ。2023年、日本テニス学会研究奨励賞。

解説=發田志音
2000年生まれ。慶應義塾体育会矢上部硬式庭球部を経て、東京大学大学院に進学。国際テニス連盟のコーチング科学誌で論文審査を担当。2018年、日本テニス学会研究奨励賞。

構成●スマッシュ編集部
※スマッシュ2024年8月号より抜粋・再編集

【画像】なかなか見られないトッププロの練習やテニス教室の様子

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配信元: THE DIGEST

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